044.5

組の采配ですが、沖方を一人にしようと思います。どこかのチームに混ぜて蛙吹のような動きを課題として、とも思ったのですが。あれは、どうも”個性”に頼りすぎている。戦闘力もあって、”個性”も強い。なのに、どこか本人がやる気がうかがえないというか。生死をかけるような土壇場でしか動かないという、USJで三下ながらの敵を大量に無効化。そして脳無を牽制しておけるような実力を持ちながらも、ヒーローとしての心構えがあまりないというか。そんなポテンシャル…それを、視界の中に対応する”個性”として弱みを突き、オールマイトさんに発破をかけてもらおうと思います。ですが、おそらく他と同様のハンデでは本人は逃げを選ぶと思うので、我々は重りを二倍、体重と同量にします。
一瞬、その話を聞いたときは相澤くんを疑った。ましてや金の卵である生徒をプロヒーロー二人がよってかかるのだから。
この試験の組み合わせ会議の内容を思いだして、コンクリートに埋まった自身を引っこ抜くために一度トゥルーフォームに一度姿を戻して、またオールマイトの姿を取ってから、周りの気配を探ると酷く静かなものだった。ここで止まっていても仕方がないので一度、小走りでゲートまで行ってみると、近くで沖方少女の声を聴いた。

「終わりません!」

強く主張をした声は、強い意思の声であった。会議で、比較的無気力だといっていた少女が、闘争心むき出しにして相澤くんを抑え込もうとしている。狭い路地を使って、相澤君の視界を奪うのがいいが、私という存在に気が付いていない様子で、気配をひそませてそちらに向かう。

「そんな、破壊技持ってたのか?」
「教えませんっての!」

砂埃によってあまりうまく見えないが、時折埃の隙間に見えたのは、相澤くんの近くに白い塊が落ちていた。それがなにかは解らないが、相澤くんのいつもの捕縛武器がなかったので、おそらく無残なそれがそうなんだろう。
彼女はたしか、置きなおす。テレポートの様で違う能力だったはずだが、どうしたのだろうか。眺めていると、うっすらと二人の姿を見出した。コンクリートの瓦礫に押されている相澤くんと、その傍らで立っている沖方少女。相澤くんの手には捕獲した証明としてのカフスがついていた。どうやら彼は捕まってしまったらしい。
時計を確認すると残り時間は7分少し。相澤くんを助けて、彼女に発破をかけに行こうではないか。


/back/

×