044 遠くでオールマイトのもうちょっとで脱出できる!と、高らかな笑い声がする。それを聞きながら、私は窮地に落ちていた。まどろっこしいから要約するが、相澤と対面、背中は壁。至近距離逃げれない。これだ。 「追い詰めたぞ、沖方」 「あ、相澤…」 間違いなく顔はひきつってる事間違いない。にじりよってくる相澤を避けようにも避ける手段もない。拳が来たら力負けするし、使いたくなかったがこの手段しかないだろう。ゆっくり後ろ手に隠しポケットから砂を取り出して、相澤の目めがけて投げる。ゴーグルをしているのは知っている。ちょっとの一瞬だけが欲しいのだ。それも察知されたか相澤が上半身だけをずらす。甘い。といった瞬間に私は相澤にかけよって、男性急所を踵で蹴り上げる。手応えは固いのでどうも、スーツのなかにファウルカップを仕込んでいるようだが、勢いがよければそれでも痛いのは知っている。お父さんのサイドキックがそんな話してた!それはどうでもいいんだ、目の前の相澤だ。それでも一瞬気がそれた。その瞬間に顎にアッパーをいれて、相澤の脳天を揺らす。頭が揺れている相澤の横を通り抜け、そのまま通路に走り込もうとしたが、殴る勢いが弱かったのか、捕縛用の布が私の足を捉えた。 「沖方、終わりだ!」 「終わりません!」 ぐっと、相澤とにらみ会う。地面を大きく蹴って相澤の顔面めがけてヘッドバット!ゴーグルしてても鼻は痛いだろ!ぐっと一瞬よためくのを見て、相澤の捕縛武器を私の手の上に置く。そして使えぬように座標を切り取って、捕縛のロープを破壊する。みごとに3センチ幅で切り取られた短い紐たちの出来上がり。 「そんな、破壊技持ってたのか?合金だぞ?」 「教えませんっての!」 置きなおす範囲を超縮小範囲にして世の中のものを強制的にぶった切る力にしてるだけっての。近くじゃないと使えないすごくめんどくさい応用の仕方。 相澤の捕縛紐を相澤の顔面に叩きつけるように投げて相澤の視界を奪う。相澤がバックステップで引いた瞬間を狙って地面を掘る。バランスを崩した瞬間に、相澤の体に接触してコンクリの雨を置く。しかもそこそこでっかいやつ。 一番でかい本命を相澤の背中の上に触れて置いて、動けないようにも二つぐらい肩や足に置く。ごめんって。視界に塔を入れて、自分の手の中にカフスを置く。そして、相澤の手にカフスを付ける。「相澤ゲット!!」と喜ぶ間もなく、絶望が耳元でささやいた。「沖方少女敵は一人じゃないんだぜ?」 …いつから、オールマイトの声が聞こえなくなっていた?一瞬顔から血の気が落ちて、腹に痛みが襲った。 ←/back/→ ×
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