013

起きたらちょっと固い真っ白なベットの上だった。いわゆる病院。ホスピタル。いや、具合が悪いとかじゃないかったはずだし。とどこか既視感を覚える。そうそう、つい最近も病院にいたわ。思い出したわ。そっちは。
今はそれと別なのは解る。真っ白な病院で、前と違う包帯の数々を視界に入れて、ふと相澤が頭を走った。そうだよ、思い出したよ。救難訓練で地面に押し付けられたんだよ。ベットサイドにお母さんからの書き置きを一瞥してその隣にあった携帯を手に取る。
起きたら連絡ちょうだい。と書いてたので、起きた。とだけ返事をして、新着の連絡に一通り目を通す。クラスメイト達が、佳英無事か?と聞くなかで、つい最近職員室で遭遇した、通形くんたち現在三年生からも連絡が来ていた。相変わらずだなぁと思いながらも、適当に返事を送り返しているとオールマイトと、それから警察の人が纏めてやって来た。話を聞くと、どうもあの日から、2日が経過してるらしい。

「沖方少女、今回はよく頑張ったね」
「…頑張った…かな?。というよりも、ほかのみんなや先生は?」
「落ち着きたまえ、君は両足骨折、頭がい骨骨折。左肩甲骨を骨折、鼻と額にひびが入ってたらしいけれどきちんと病院が処置したから脳とかには後遺症はないそうだよ。それからね。」

君がある程度の敵を生き埋め…いや、無力化したので相澤くんも一命をとりとめたし、ほかの先生や生徒も君より酷い者はいなかった。むしろ、沖方少女、君が一番酷い重症者で。君には申し訳ないことを、と思っているが。これは、誇るべきことだ。君が居なかったら相澤君はもっと酷いことになってただろう。
今オールマイトが生き埋めって言った。いや、生き埋めで間違いないんだけどさ。ほんと、頑張ったかな。一人問いかける。殺されようとするから自衛のために個性を使う。これは、ほんとに頑張った。なのか?。こう言われると違うかもしれない。

「私、そんなの言われる資格なんてありません。」

私は自分のことで必死だっただけで。相澤…先生が、どうとかだれについても考えてません。私は私の身を守ることだけが一番だったんです。だから、そんなほめられたことをしてないです。むしろ、こんな自分勝手でいいのかな、とも思ってるぐらいで。ヒーロー科受験もそんな誇れる受験動機でもないですし、だから。純粋な気持ちなんてまったくない。完全に無我夢中だった。なにもしてない、しいて言うなら自分のためだった。それはヒーローとしてどうなのかはわからない。
吐き出す言葉にもつっかえながらも紡いでいきながらも、言葉と比例して、視線は落ちて自分の手を見つめる。もしも、あの場所に爆豪や轟がいたならばもっと有用に救えたのではないのだろうか。とも思う。私は、なんて自分勝手だろうと口から出そうになっていていると、オールマイトの大きな手が私の手を取って、目の高さまでもっていく。自分の掌の向こう側にオールマイトの顔が見える。

「君の思考はどうであれ、結果は変わらない。君は一人のプロヒーローの命を救ったことには代わりない。君が居てくれてよかったと、私は思ってる。だから、胸を張っていいんだよ。沖方少女、君は相澤くんを助けた小さなヒーローだからね」
「オールマイト、不純な動機の私が、今からでも頑張ったら、ヒーローになれるかな?」
「もちろん。君は既にヒーローの卵だからな!さぁ。あとは、事情聴取を受けて、あとで校長先生も来るから、ご挨拶してからなら帰ってもいいとお医者さんは言ってるから、気をつけて帰りなさい。」

私は失礼する。片手をあげてオールマイトは窓から出ていった。その窓を見ながら、少しだけ頑張ってみようかな。と思ってしまうのは、私は流されやすいのだろうか。なんて考えてしまうのだから。

「なれるのかなぁ。」

今からでも。不純な動機の私が。変われるのだろうか。
そして、事情聴取を終えた後、私は校長先生にしこったま怒られるのだった。


/back/

×