012.5

僕、緑谷出久たちが、セントラル広場についたとき、頭を殴られたようだった。動かなくなったクラスメイトと、プロヒーロー。脳を晒し出した敵が相澤先生を殴っている様子が、現実だと言わんばかりの映像だった。脳を出した敵が、相澤先生の頭を地面に叩きつける。とんでもない音が聞こえて、隣の峰田くんが震えていた。
それよりも、動く気配のないクラスメイト沖方佳英さんの容体も心配だった。ここから見える限りで、足が違う方向にも向いているように見えるし、彼女のあたりに血が溢れているのがここからでも見えてるのだから。気を失っているならいいんだけれど、頭もとにひびの入った地面が見える。頭を打ったのではないのかとも思える。この光景は、異常だと言わざる負えない。

「緑谷ダメだ…さすがに、考えあらためただろ?」

風に乗って遠くから聞こえる会話が、何を言っているのか微かにとらえるが、判別ができるほどに聞こえない。何を言っているのだろう?と思ったが、帰るって聞こえたわね。と呟いて蛙吹さんが気味が悪い。と足す。確かに、これだけのことをしておいて、あっさり引き下がるなんて。オールマイトを殺したいんじゃないのか!?これで帰ったら、雄英の危機意識があがるだけなのに、なにをいってるのだろうか。目の前に広がる光景を見つめながら、思考を巡らせる。何をしたいのだろう。と考えた刹那、手をたくさん付けた男が、目の前に現れて蛙吹さんに手を伸ばした。蛙吹さんに手が触れて、男は本っ当かっこいいぜイレイザーヘッド。と擂り潰すように微かな声量で出した。状況を理解した瞬間に、脳が危険だと警鐘を鳴らした。
さっきの敵たちと明らかに違いすぎる。蛙吹さんを助けて逃げないと。と判断して、僕は水から飛び出して、声を張り上げる。

「手っ、放せぇ!!」

男が何か一言を放つと同時にボクの拳と”個性”をさく裂させる。使うたびにひどい怪我をする”個性”が、このタイミングで”力の調整”がこんな時にうまくきめれた。水しぶきの間から、みえるのは脳の見える男が一人。いつの間に来たのだろう、っていうか聞いてなさそうな様子で、殴られる。と判断した瞬間に、遠くでけたたましく扉が開く音がした。

「もう大丈夫、私が来た!」

その声は、僕たちの望んでいた希望の声でもあったんだ。


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