014

我が家の両親は、私に似た”個性”の持ち主だ。
物を動かす”個性”を持った父物理ヒーローサイコキノと、物を重たくする”個性”を持った母重力ヒーローグラビティ。私によく似た”個性”を持つ二人は、昔雄英のヒーロー科を卒業した立派なヒーローだ。いや、今となっては父親だけ。だが。
二人は結婚と同時に、所属していた事務所を辞めて地域密着型の個人事務所を設立した。父のサイドキックとして働いていた母は、私を生むと同時にほぼ引退し事務所の運営と家のことをしている。父は新たなサイドキックと共に今もなお地域を守るために働いている。そんなこともあってか、正義感の強い両親は、私にもどうも同じ道を走らせたかったらしく小遣いの額を上げるという魅力的な言葉と共に、進路を決めたのだ。お金は大事だよね。そうだよ。老後の蓄えとかたくさんしたいし、結婚式とかもお金がかかるし、大学とか行く場合もさほら、学費たくさんいるじゃん。だから、っていうしょうもない理由でヒーロー目指してたわけだけど。
今回ので自分の考えが甘いこともわかった。…でも、命を懸けてまでヒーローになりたいかっていうと、何とも言えない。さっきのことだし。そんな急に未来を変更するほど私も馬鹿じゃない。
さっきのオールマイトの言葉が、ずっと胸に引っかかりながら、帰宅の道を歩く。
家に帰ってみれば、またお母さんが泣いた跡があった。ほら、もうすぐご飯にするから。とリビングに促され、ぼんやりテレビを眺める。なんでもないニュースを流し見ながら、頭の中は、帰る途中にもずっとひっかかっていたオールマイトの言葉だった。

小さなヒーローだ。
そんなことない、私は自分のことで一杯一杯だったのだ。誰かを救うだなんて、出来ない。なによりも、あのキラキラに中てられてしまってるのだ、後ろめたさのほうがたくさんあって、どこか宙ぶらりんな私は、どうしていいのかわからなくなってしまう。

「ねぇ、佳英。」
「ん?」
「学校、変える?」
「え?」

ほら、前にも事件に巻き込まれたじゃない。もう、ね。お父さんもお母さんも、心配でね。
話しにくそうに、私の前に座る母は、また両目に涙を貯めている。心配なのはわからなくもない。でも。ちょっとだけ、思っちゃったんだ。

「ね、母さん。」

ちょっとやる気のなかった私なんだけれどね。今回のことで思ったこと、たくさんあるの。
経験者のお父さんとお母さんに聞いてほしいんだ。今からでもなれるかもしれない将来の一つの道。
一通り両親に話し終わって得た結果は、お前も敵を何人も倒したんだね!すごいよね!まぁ、ヒーロー免許持っててそのまま社会人してもいいわけじゃん。最悪家の事務所に入ればいいんだし。とか父がいうので、じゃあそれで。とあっさり決まったので、転校も棄却。平和平和。


/back/

×