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 そんな様子を見ていたカグラは柔和な表情を引き締め、真っすぐにジルを見据えた。

「ジル君はどうしたい?私は君を養子に迎え入れた以上はしっかりとした学力と教養は身につけさすつもりだった。だけど君は私が思っていた以上に優秀だったからね。自分の学びたい学校に行くといいよ。私は全面的に協力するつもりだから」

 そんなカグラの言葉に、自分の邪念が申し訳なく感じたジルだったが、初めから利用出来るものは利用するつもりだったんだと自分に言い聞かせ、真っすぐカグラの方に眼を向けた。

「俺は軍に、この国に貢献出来るような人になりたい。だから、帝軍に入りたい」

 帝軍、それは正式名称"帝都軍部育成学校"この広い国ルーベルの中心に位置し、将来軍の中核を担う者を育成する為に作られた、確かな学力と教養を兼ね備えた者しか入る事のできない難関、もちろんよほどの秀才でない限り特待枠はなく、その学費の高さからもほとんどの生徒は上流階級の者が締めていた。

「うん。だと思ってたよ。ジル君のことだから学費とか気にしているんじゃないかなと思っていたんだけど、そこは気にしなくていいんだよ。私たちは家族なんだからね」

 カグラはいつもの胡散臭い笑みではない、笑顔を浮かべながらそうジルに言ったのだった。

 バルトルはそんなカグラを見て、自分の今日此処へ赴いた目的は達成されたな、と内心ほくそ笑みながら二人の様子を穏やかに見守っていた。


 話しも落ち着き、ゆったりとお茶を飲みながらたわいもない会話をしていた時、ふとカグラが外に眼をやりふふふっといつもの意味ありげな笑みを浮かべ、ぽつりと呟いた。

「ジゼルさんやっぱり君は罪な男なようだね」

「・・・?いったい何の話だ」

「さあね?」

 すると何やら部屋の外からどたばたと揉めているような音が聞こえ、部屋の扉が開け放たれた。


「ユラ・カグラ・・・。私の旦那様を返しなさいっ」

 そう言ったのは、銀髪の長い髪を靡かせ、長い睫毛に縁取られた青い瞳を鋭く光らせた、完璧な芸術品と言ってもおかしくないような美しい女性であった。



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