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「そういやジル、お前15歳だろ。来年どうするつもりなんだ」
「・・来年って?」
「ほら、この国の制度知ってるだろ。16歳から18歳の三年間は皆どこかしらの学校での教育を受けなきゃならねえってやつ」
ジル達が住むこの国ルーベルは様々な階級職種の者たちがいる、だからこそきちんとした教育を家内で出来ない子供ももちろん出てくる。だが、それこそが国のレベルの低下であると指摘したのが現総督であった。
だがもちろん、せっかくの働き手がいなくなっては困るという家もある、そこで16から18の三年間だけでも、同年代との共同生活や最低限の知識を学ぶことを義務付けたのだった。
学校と一口にいっても、ルーベルの様々な地域に分散されており、地域ごと、または分野ごとに内容や学費の負担額も甘味されていた。
「てかユラはその辺りちゃんと考えてたのかよ」
バルトルに突然振られたカグラはふふふっと相変わらずの笑みを浮かべた。
「当たり前ですよ。それにそれを踏まえてもうすでにジル君には家庭教師をつけてますしね」
そう言うとカグラはジルににこりと微笑みかけた。
「へえ、お前にしちゃちゃんと考えてたんだな。それでこいつの学力はどうなんだ」
「先生も驚かれたほどの秀才ですよ。私もまさかこの歳で軍立法典を諳じられる子がいるなんて思っていませんでしたから」
そう言ってカグラは、わざとらしく驚いたそぶりをした。
「てことはなんだ、ジルお前は軍に興味があるのか?」
バルトルに振られたジルは少し言葉に詰まったが、はっきりとした口調で答えた。
「うん。だってこの国の中核は軍でしょ。国を守ってるんだから、強いってことだよね。男なら憧れるよ」
ジルの答えは子供らしい、この国では極一般的な少年の抱くものそのものであった。だがもちろん、それがジルの本意ではなく、軍に興味を持ち、軍立法典まで覚えてしまったのは軍の情報を手に入れ、敵を見つけ出すという野心に他ならない。
だがそれを知るはずもないバルトルは、ジルの答えに気を良くしたのか、ニカッと笑みを浮かべ、「さすがこの国の子だな」とジルの頭をわさわさと撫でたのであった。
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