束の間の日常
「・・・っん」
ジルがカグラの屋敷に来てから早三週間が過ぎようとしていた。
そしてジルが朝起きると眼の前にカグラがいることも日常となりつつあった。
「また潜り込んだんだ・・・」
ジルは寝ているカグラを見てそう呟いた。
てっきり毎夜抱かれるのかと思っていたジルだったが、カグラは今のように一緒に寝ること以上のことをジルに求めなかった。
そしてジルに家庭教師を付けてくれたり、たまの休みには一緒に過ごしてくれた。
これでは本当に親子の様ではないかとジルは戸惑うのであった。
「ユラさん起きて下さい。また遅刻しますよ」
きっとまた夜勤をしていたのだろうと思いながらも、とりあえずジルは仕事のあるカグラを起こすことにした。
「・・んー・・。ジル君今日も可愛いねえ・・・ぐぅ・・」
寝ぼけているのか、うっすら眼を開けそんなことを言うとカグラはまた意識を手放した。
そんなカグラを見ながら、何でこんな人が軍部で大佐なんて上のポストにいるのだろうかとジルは思うのだった。
だが実際の所ジルの目的である軍の情報に関しては、カグラが大佐であるということ以外は何もまだ知ることができなかった。そしてそれこそが、カグラが一筋縄ではいかない男だということを表していた。
本当にカグラが起きそうになかったので、とりあえずジルはヨーゼフを呼ぶことにした。
ヨーゼフはカグラを起こすスペシャリストであるとジルは思っている。だがいまだに起こすときは部屋の外で待たされるため、果たしてどのように起こしているのかは定かではない。
時たまカグラの悲鳴が聞こえるのは気のせいだろうと思うことにしているジルであった。
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