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 ジルが思っていたよりもしっかりとした受け答えをしたことに、カグラは自分の眼は間違ってはいなかったと内心ほくそ笑んだ。

「心配してくれてありがとう・・でもたいした問題ではないのだよ。私は今はもう貴族ではないからね。それに家族と呼べるものもいない身だ。だから、私の家族になってくれないか」

 普段の飄々とした面持ちではなく真剣な顔をしてカグラは言った。

「・・・っていうか、もう勝手に手続きしてんじゃんか」

 ジルはそんなカグラを前に眼を反らしながら呟いた。

「わかったよ。あんたの家族になってやるよ」

 不服そうに言ったのはジルのせめてもの反抗だった。だが内心家族を全て失って頼る人が誰もいなかったジルにとっては、仮初の家族であったとしても嬉しかったのだ。

 その後で、「よかったですね、ユラ様」「ああ、私の猿芝居にも磨きがかかってきたようだ」などとカグラとヨーゼフが耳打ちしていたことをジルはしらない。

「じゃあ俺はあんたの息子になったわけ?」

 ジルの問い掛けに、考えるそぶりをみせるとカグラは口を開いた。

「戸籍上はまあそういうことだね。でも私としてはお嫁さんとして迎えたんだけどね」

 笑顔のカグラとは逆に、ジルはぽかんとした顔をしていた。

「あ、でもそれだとお兄様呼びが出来なくなるなあ・・。もう寧ろジル君は私の嫁、弟兼息子的な立ち位置で「ちょっ・・なんですかそれ!?てかもう俺お兄様呼びなんてする気これっぽっちもありませんから!!」・・そんなっ・・・!」

 こうしてジルは息子兼嫁に収まった。

「ねえジル君、きみあの時の可愛さはどこにいったの?」

「・・・いや、あの時はお客さんだったわけですし。実際俺あんな女々しい性格じゃないんで、変なもの求めないで下さいね」

 カグラは見た目と中身のギャップがありすぎると一人愚痴たのだった。



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