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 ジルの頭の中では未だに収集がつかず、カグラに言われた言葉が反芻していた。

「えっ・・俺の家族?・・どういうこと・・・」

 そんなジルの様子にカグラは、「あれを」とヨーゼフに指示すると、ヨーゼフはしっかりとした金で彩られた洋紙をカグラに渡した。

「これが何かわかるかいジル君」

 カグラはそれをジルの眼の前に見せた。

「・・・!?・・これは・・・って、えっ?」

 カグラがジルに見せたのは、この国が発行している戸籍抄本のようなものだった。そこにはジル・カグラと書かれており何故か自分の指紋印が捺されていた。
 この国において養子をとる際、その子供側は名前の一切を変えることが可能だった。それはその家に馴染めるようにという配慮からだ。
 ジルの本来の名前はジルベール・ステファン。だがほとんどのものがジルと呼んでいた。ジルは身を隠さなくてはならなかったことから、その愛称のみでこれまでやってきた。この国において片名は孤児の証でもあった。
 それでカグラは、ジルという名で役所に提出していたのだ。

「ふふふ、驚いたかい?」

 カグラは楽しそうにそう問いた。

「驚くというより、呆れてますよ・・・」

 ジルはため息をついて言った。

「あなた貴族じゃないんですか!?こんな簡単に一度あっただけの人間を家族にするなんて、危機管理なさすぎですよ!!」

 ましてやジルはカグラを利用するつもりできた身なのだ。何を考えているのかわからないというようにジルは呆れた顔をした。



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