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 死屍累累、カグラ達が莫大な量の仕事を終えたのは真夜中に近い時刻だった。女性隊員は原則別館に泊まる施設があるため、室内には男性隊員のみが伸びていた。
 何故これほどまでに急を要したのか、それは八日前に送られてきた一通の要請が始まりだった。北西地域の山間で謎の病が発生している。それの調査をしに行った諜報部の者までがその病に侵されてしまったという情報が入り、急遽医療部隊や伝染病であることも考慮して科学研究部隊の編成が必要となった。そしてそうしている間にも病はすごい速さで広がりを見せ、一刻の有余もなかったのだ。そして今日全ての作業が完了し、残った後始末等に黒薔薇の館の隊員達は追われていたのだった。黒薔薇の館は基本的に白薔薇の館の補佐的な役割を担っているため、雑務処理その他調整等を任されていた。
 虚になる意識の中、カグラはジルのことを思い出した。

「そういえば、彼が来るのはいつでしたっけ・・・」
 
 とりあえず、今夜もむさ苦しい職場で一夜を過ごすことになりそうだとカグラは思った。
 一方ジルの方は、この家の執事長である初老の男ヨーゼフに夕食を持て成されていた。
 ただジルは気になって仕方がなかったことが一つだけあった。自分は彼らと同じようにカグラに仕える身であるはずなのに、何故か様付けされ恭しく扱われているのだ。それがどうしても分からずジルは頭を捻った。

 その夜カグラが帰ってくることはなかった。



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