好きなの。アーティストが。
謳をつくる人が。音を紡ぐ人が。世界を描く人が。物語として、世界を綴る人が。
その人自身の世界を生み出す人が、好きなの。
そう言ったのは、近所の同い年の女。つまり幼なじみ。
本当にただの幼なじみだった。
この会話になったワケは、なんてことなくて、バンドを始めたと報告したからだ。
俺が、唄が好きだと言って、憧れだと言った。
するとあいつはカッコイイよねと言い、アーティストが好きだと話し始めた。
「うん。優太と同じ。憧れなんだ」
そう言って笑う。
「別にね?プレッシャーを与えるワケじゃないけど」
と言葉を切り、少し逡巡するように足をぶらつかせ(ブランコが揺れる)、空を見上げる。
「あんたの世界、見てみたい。
んな簡単じゃないってのはわかってるけど」
思わず息を止めた。
ツマラナイ報告だと嘲笑うと思っていたのに、こいつは俺の背を押す。
さりげなく、確実に。余裕をみせて、ほのめかす。
久々に、本気になろうと思った。
その場のノリとか勢いやらで始めるとしたバンドだったけど。
その一言だけで、俺の心が揺さぶられた。
悔しくて、誇らしくて。
「覚悟しとけ、 」
と呟いた。
あの日の夕焼けはやさしい薄橙の光だった
(世界を染め上げるのではなく)(、世界を包み込むような)
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memo.
別館のものを転載。短編としてならきれいにまとまるかと
20101023
bkm