忘想生物


「いつか忘れちゃうのかなって。
今こうやっていろんなことにぶち当たって、悩んで、泣いて、笑って、切なくなって、嬉しくなって。
こんな気持ち、全部忘れちゃうのかな。
私が嫌いな、大人になっちゃうのかな。
……それだったら、ヤだな……」


空に向かって手をのばす。
少女はまるで睨むように黄昏れを見送り、のばした手で空を掴んだ。


「……… 大人ってのも、もしかしたらイイもんなのかもしんないよ?」


少女はそんなことを言い頭にポンと手を乗せてくる青年を不服そうに見上げた。

自分とは異なる意見に不満を覚えたのだろう。


「かーえーで?
何その悟ったような口ぶり。
あんたも私と同い年でしょうが」


青年よりはるかに小柄な少女は、どうやら同い年らしい。
幼い顔立ち、というよりは純粋な雰囲気がそう見せてしまうのだろう。
もしくは青年の少女に対する態度か。


「悟った、って。
んなことねぇよ、ぼくだって、思うことはいろいろあるさ。
…ただ、諦めが見えてきただけだ」


困ったように苦笑する、楓と呼ばれた青年。
それを聞いた少女は呆れた顔をした。


「諦めがついてる時点でもう悟ってることと同義でしょうが」


「え……。んんー…、そう、なのかな。
すごいね、実咲」


「ふふっ、…楓ってやっぱりどっか抜けてる」


穏やかに笑った実咲と呼ばれた少女は、楓を覗き込んだ。

こうして見ると、実咲のほうがしっかりしているようである。
見た目と中身がそれぞれ違うらしい。




春麗らかな昼下がり。

花見にはまだ早い桜に囲まれて、未来をみようとした少年少女が、いた。



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memo.
100819
季節はずれだけどもでも書き始めたときはまだ春だったのに……orz


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bkm



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