随分と遠回りし、やっとの思いで伍番街スラムへ戻ってきたあたしたち。
駅前で神羅のヘリを見つけてしまい、スチールマウンテンを経由しなくちゃならなくなったおかげでヘトヘトなあたしやエアリスに比べて、クラウドは余裕の表情。
さすがだなと思いながら、今はエアリスの案内でエアリスの家を目指す。
途中、カフェの店主さんに手伝って欲しいとお願いされたけど、後ほど伺うとお断りした。

「なまえ、たまにカフェのお手伝いしてるの。看板娘なんだよ」
「そんな大袈裟なものじゃないよ。今ね、あたしも伍番街で生活してて、カフェで働いてたり、たまにお客さんの依頼でモンスター退治とか、届け物したりしてるの」
「クラウドと一緒だね。なんでも屋さん」
「そうだな」

途中、子供たちに囲まれながらリーフハウスで園長先生にどれくらいお花が必要か確認して、再びエアリスの家を目指す。
この通りを抜ければ、もう目と鼻の先だ。

「この前あげたお花はどうしたの?」
「あれは…」
「誰かにあげた?」
「…まぁ、そうだな」
「え?だれにだれに」
「覚えてない」

そう言って視線を外したクラウドをからかうようにエアリスが見ている。
クラウドは昔から、こうやって都合が悪かったり照れくさいときは視線を外す。
昔から変わってないなぁと思いながら、ふとティファのことを思い出す。
そう言えば、七番街で一緒に暮らしてるって言ってたっけ。
それなら、お花とかあげたりしてたり…なんて思ってはみたものの、そんなクラウドは想像できなかった。

だって最後にちゃんと話したのは7年前。
まだまだ子供だったあたしたちも、今はもう大人と言って差し支えない年齢になっていた。
あたしの知らない時間をクラウドは過ごしていて、それが同時に寂しくもあったけど、大切な人にスマートにお花を渡すくらい、そんなことが出来ても不思議ではない。

「もしかして、ティファにあげた?一緒に暮らしてるって言ってたもんね」
「…そう、だったかもな」
「ティファってクラウドとなまえの幼馴染?」
「うん。すっごい可愛くて優しいの。村で1番の人気者だったから、ティファのこと好きだった男の子、多かったんだよ」

そう言うとクラウドは不機嫌そうに視線を外す。
自分自身の話、本当に苦手なんだなぁ。
今日はずっとエアリスに翻弄されているから、またからかわれるかもって警戒しているのもあるのかもしれないけど。
それに気付いてか、エアリスがこそっとあたしの方に声をかける。

「クラウドも?」
「うん。そうだと思うけど、クラウド昔から否定するんだよね。あ、でも…好きな子言い当てられたら、やっぱり恥ずかしいよね」
「ふーん。なるほどねぇ」

エアリスは、なんだか楽しそうに笑う。
自分で言ってて、少し悲しくなったけど事実だからしょうがない。

ティファは昔から優しくて可愛くて、成長した今ならきっとかなり美人になっているはずだ。
元気なら会いたいな、とそう思いつつも、2人が笑っている姿を見て平常心でいられるか不安だった。

でも、昔も今もそれは変わらないんだっけ。
そう思うと、いくらか大丈夫な気がした。



ーーーーーーーーーー



伍番魔晄炉での戦闘の後、目を覚ますと、八番街で会った花売りの…エアリスとなまえに再会した。
同郷のなまえは、5年前のあの事件の日に行方不明となっていて、ミッドガルで再会したティファも、あの日以来なまえのことはわからなかったらしく、ただ無事を祈ることしか出来なかった。
心配していたのは同じだったようで、なまえは俺の顔を見るなり安心したと泣いてしまった。

正直、なまえに泣かれるとどうしていいかわからない。
昔からなまえが泣いてるところなんて見たことなくて、いつも笑っていた。
だからこそ…いや、そうでなくても、俺は泣いてるなまえにどうしてやればいいかわからない。

そっと、涙を拭うと「大丈夫」と笑う。
その笑った顔は、昔の面影はあったが、どこか大人びていて、なんだか胸の奥が騒ついた。

それは、タークスの男ーーー確か、レノと言ったか。
アイツが現れてから、余計に感じた。

妙に親しげになまえと喋るアイツが、なまえが心を許している姿が、妙に腹立たしかった。
それにエアリスを庇って無茶する所もだ。
今も昔も、誰かの為に無茶をする。
あの時だってーーーそう思った瞬間に、額に強い痛みがして、記憶にモヤがかかる。
なまえが心配そうに覗き込むから、俺は「なんでもない」と誤魔化した。

狙われている理由は、エアリスに上手くはぐらか されてしまったが、きっとなまえも同様に狙われているんだろう。
タークスに狙われてると言うなら、依頼なんて抜きにして護ってやりたいと強く思った。
どうしてなのか、理由はわからないが、昔からなまえは危なかっしいところがあるからそう思うんだろう。

「クラウド?」
「ん?」
「ぼーっとしてた気がしたけど、大丈夫?」
「あぁ」
「今度、七番街スラムに案内してね。あたしもティファに会いたいから」
「ティファもなまえのこと心配していた。なまえの無事を知ったら、きっとティファも喜ぶ」

そう俺が言うと嬉しそうに笑う。
その顔を見ると不思議と安心する。

タークスに狙われているなら、この後も傍にいて護ってやりたい。
またいつ、アイツらが来るかわからない。
ただ、今は俺も神羅にとってはお尋ね者だから、傍にいる方が危険かもしれないが、それでも、傍にいれば護ることが出来る。

その為に、俺はソルジャーの力を手に入れた。
何故こんなにも、なまえを護りたいと思うのかーーーその答えは今は出ないが、ただ、なまえに隣で笑っていて欲しいと思う。

昔と同じように、傍に。



伍番街スラム

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