「なまえ、昨日はありがとうね。おかげで、子供たちも安心して眠れたみたい」

リーフハウスでのお泊まり会の翌朝。
朝食の準備のお手伝いをしながら、園長先生は そうあたしにお礼を言った。
子供たちの不安が取り除けたなら、それだけで十分だった。

昨夜、願いも虚しく伍番魔晄炉は爆破されてしまった。
報道によると、神羅が場所の特定をした関係で被害は最小限で済んだものの、魔晄炉は爆破されてしまい、今は完全停止状態。
最小限で済んだと言っても、やはり所々に被害は出ているようで、スラム中が騒がしくみんな不安げな表情を浮かべていた。

「じゃあ、あたし依頼があるのでこれで失礼します」
「気をつけて行ってくるんだよ。あと、エアリスに会ったら、お花の注文したいって伝えてくれるかしら?」
「わかりました!依頼の後、ついでに迎えに行ってきますね」
「そうしてあげて。この騒ぎで心配だものね」
「はい。じゃあ、いってきます!」

園長先生と子供たちに見送られて、昨日の依頼である墓地付近のモンスター退治に向かう。
それが終わり次第、駅の向こうにある教会を目指す。

エアリスも一緒にリーフハウスに泊まったものの「教会の様子が気になるから」と、あたしよりも先に出掛けてしまった。
プレートの上での被害も然程ないみたいだから、この間の八番街みたいなことはないとは思うけど、心配になってしまう。

「えーっと…目撃されたモンスターはっと…」

墓地近くのトンネルを潜ると、目の前には目撃情報のあったモンスターがいた。
少し数は多いけど、特に心配はない程度のモンスター。

「急いでるし、威嚇の意味も込めてお姉様にお願いしようかな」
「…」
「わかった、わかった。もうお姉様って呼ばないから、そんな目で見ないでよ」

隣に寄り添うシヴァは小さくため息をついて、目の前にいるモンスターを指差した。

「うん、お願い。スラムに近付かないように、氷漬けにしちゃって!」



ーーーーーーーーーー



モンスター退治を終え、駅の向こうの教会へ向かう。
壱番魔晄炉に続いての爆破のため、住民たちの不安は大きく、列車も動かず、プレートの上の状況もわからないため、駅前は騒がしく、あちこちに野次馬が溢れていた。
ニュースで見ていたものの、実際に上がる煙を見るとその被害の大きさを確信してしまう。

「エアリス、いるー?あのね、園長先生からお花の依頼があった…んだ、けど…」

ついでに教会付近に出現するモンスターも倒して辿り着いたスラムの教会。
お花のお手入れをすると言ってたエアリスの元には、もう1人いた。
頭上から降り注ぐ日の光にキラキラと反射する、金糸の髪。
あたしの声に反応するように、少しだけ警戒しながらこちらを見た魔晄の瞳。
ずっと心配していた、大切な大切な幼馴染。

「クラ、ウド…?」
「…?まさか、なまえなのか?!」

駆け寄ったあたしを、まるで信じられないものを見るように大きく目を見開いた表情で見るクラウド。
ずっと、ずっと、心配していて、目を覚ますことを願っていた彼が目の前にいる。
溢れ出る涙を見て、慌てたクラウドは「大丈夫か?」と優しく涙を拭ってくれた。

「ごめん、もう。大丈夫…」
「なら、いいが…」

未だに心配そうな顔をしているクラウドに、再度大丈夫だと言って笑うと、やっと少し安心したように笑ってくれた。
その横で、エアリスが心配そうに見ていたので笑うと彼女も安心したように笑う。

「2人とも、知り合い?」
「うん。そうなの。同郷の幼馴染で…2人も知り合いだったの?」
「うん。この間八番街で助けて貰った人がいるって言ったでしょ?それがクラウドだったの」
「そうだったんだ」
「それより、今までどこにいたんだ?5年前、突然いなくなって…俺もティファもずっと…」
「…親切な人が助けてくれたんだ。ごめんね、心配かけて。あの後、バダバタだったし連絡手段もわからなくて…」
「いや…なまえが無事で良かった」

5年前ーーーその言葉が引っかかり、思わず嘘をついてしまった。
すぐに、ニブルヘイムでの出来事のことを言っているのはわかったけど、あの日クラウドは、その場にいたことを隠したがっていたはずだ。
特にティファにはソルジャーになる約束を守れなかったから、余計に言いたくなかったと思う。
あたしはザックスから聞いていたから知っていたけど、あの日は結局会えなかったと思っていた。

それに、持っているバスターソードはザックスが愛用していたもの。
神羅に捕まってから、クラウドが目を覚ますまでの間に何かあったのは明白だった。
もしかしたら、あの日見た出来事が現実なってしまったのかーーーそう思うと余計に本当のことは言えなかった。
だから、思わず嘘をついてしまったし、誤魔化すように「ティファは今どうしてるか知ってる?」と、わざとらしく話を変えてしまった。

「あぁ。ティファなら今は七番街スラムにいて、俺もそこで一緒に生活してる」
「…良かった。ティファも元気?」
「あぁ。なまえが生きてるって知ったら喜ぶと思う」
「うん。あたしもティファに会いたい」

一緒に生活してるーーーその言葉に引っかからない程、鈍感じゃない。
それでも、クラウドを支えてくれる人がティファであるなら誰よりも心強い。
あれから何かあったにせよ、クラウドが魔晄中毒から解放されて自身を取り戻して、普通の生活出来ているならそれだけでいい。
うまく笑えているだろうかーーーそう、少し不安になったけど、どうやらそれは大丈夫だったみたいだ。

「2人とも立ち話もなんだし、スラムに戻らない?リーフハウスから注文依頼もあったし、クラウドは少しゆっくりした方がいいと思うよ。だって、上から…」

ギギギ、とエアリスの言葉を遮るように教会の扉が開く。
この場に似つかわしくない、武器を持った兵士を連れた赤髪の男、レノが「邪魔するぜ」と一応、詫びをいれながら入ってきた。
クラウドは警戒しながらレノを睨み、あたしやエアリスの前に出る。

「お前、何?」

そう言ったレノはクラウドを睨みつつ、あたしの方へと視線を動かした。

再会

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