奥にあるコルネオの部屋に入ると思わず固まってしまう。
大きなベットが1つ、ピンク色の照明が落ち着かない。

おそらく、クラウドたちも別室に連れていかれているはず。
アニヤンさんが服と装備に関しては当てがあるからなんとかしてくれるって言ってたし、時間さえ稼げばクラウドたちが助けに来てくれる。

ここがどう言う部屋であることは理解している。
経験はないにせよ、あたしに出来ることは如何に時間を稼ぎ、コルネオから情報を集めること。

「さぁ、仔猫ちゃん。俺の胸にカモーン」
「えっと…その、」
「その初心い表情、たまらんのー!」

足をバタつかせながら、シャッター音が鳴り響く。
正直不快でしかないけど、これもティファのためと言い聞かせる。

「あたし、コルネオ様の話聞きたいな。こんな大きな街のドンなんて、凄いです!」

伸びてきた手をすらりと躱し、部屋の調度品に興味がある振りをして壺に触れる。
褒め言葉に気を良くしたのか、どこで手に入れたとか、如何に自分が凄くてとか、自慢話が続く。
笑顔を浮かべて時々相槌を打ち、欲しい情報以外は右から左へと聞き流す。
再度近付いてくるコルネオを再び躱し、別の調度品に触れる。
この策も何度も使えないから、コルネオが楽しんでいる内に次の手を考えなくては。

時間を稼ぎつつ、なんとか七番街スラムでのことを聞き出さなくちゃ。
こうやってご機嫌な内に情報を少しずつでも引出させれば、と何回目かの追いかけっこをしながら考える。

「だから、コルネオ様は多くの人たちに慕われているんですね。あ!そう言えば、他の街でもコルネオ様の部下の人をお見かけしましたよ?この街だけじゃないなんて…きゃ!」
「さぁて、仔猫ちゃん。そんな無粋な話や追いかけっこはおしまいにして、俺に身を委ねて…」

そう言って触れる手に引き寄せられ、ベッドに押し倒される。
上から被さり、ドレスのスリットから太腿をなぞる度、悪寒のように背筋がゾワゾワする。

触れられたくない。
ぎゅっと瞑った瞳からは涙が溢れてくる。
クラウド、クラウド、クラウド…!
そう何度も心の中で名前を呼んで、助けを求める。

ただ、コルネオにとってはあたしの反応は全て喜ばせるだけのものだった。
触れる手が気持ち悪くて身をよじる姿も、触れられたくないから溢れ出た涙も、閉じた瞳も。
「ほひー」と言いながら、スリットをたくし上げていくように太腿を撫で続ける。

「っ、クラウド…!」

その瞬間、大きな音と共にあたしに体重をかけていたコルネオの重みがなくなり、呻き声が聞こえた。
ぐいっ、と誰かに手を引かれて肩をぎゅっと掴まれ抱き寄せられる。
あたしはこの温もりを知っている。
教会で感じたあの優しくて力強い温もりと同じ。

「なまえ、遅くなってすまない」
「ありがと…クラウドは大丈夫?」
「俺のことはいい…怖い思いをさせたな」

そっと涙を拭うクラウドの表情はひどく傷付いていて、優しさに触れただけで安心する。
震えていた手もクラウドが抱き締めてくれただけで、落ち着いていく。
落ち着いて気付いたのは、珍しくクラウドの息が上がっていて、それだけで急いで駆けつけてくれたんだってことがわかる。
戦闘中も決して息は上がることなく涼し気な顔をしていたのに、今はあたしを助けるために呼吸を乱している。
それが嬉しくて嬉しくてたまらない。

「なんだ、お前は!どこから入ってきた!?」
「黙れ」
「おい!誰か来い!この男に礼儀を教えてやれ!」
「おあいにくさま。あなたの子分は誰も来ないみたい」
「なまえ、大丈夫?」

遅れてティファとエアリスも来てくれて、あたしの無事を確認すると安心して微笑んでくれる。
まだ少し震えていたあたしに気付いたクラウドは手を握ると、あたしをコルネオの視界から隠すように再び抱き寄せる。

「…斬り落とす」
「待って、クラウド!」
「止めるな、ティファ!」
「そうだよね、ティファ。まずはねじり切っちゃおう」
「うん。で、すり潰してから、斬り落とす」
「ほひー」



ーーーーーーーーーー



3人がコルネオを追い詰めている隙にエアリスから受け取った服と装備に急ぎ着替える。
衝立の裏でも感じるビリビリとした空気に、少しだけコルネオに同情した。

「で?神羅のハイデッカーの目的は?」

ティファの視線と脅しに観念したらしく、神羅の目的を喋りだす。
アバランチが七番街スラムに潜伏していることがわかった神羅は、七番街を支える柱を破壊しプレートを落としてアジト諸共つぶすつもりらしい。
その為に、コルネオに命じて手下を使い色々と探らせていたようだった。

神羅に歯向かう敵は容赦なく徹底的に排除する。 青ざめるティファに、エアリスは七番街スラムへ戻ろうとあたしたちに声をかけた。
今ならまだ間に合うーーー作戦開始時間までどのくらいあるかわからない。
七番街スラムの人たちを避難させる時間があればいいけどーーーそう思いながら歩き始める。

「ちょっと待った!」
「黙れ」
「すぐ終わるから聞いてくれ。俺たちみたいな悪党が、こうやって真相をベラベラと喋るのは、どんな時でしょうか?」

ベッドの上に立ち変な動きをするコルネオ。
どんな時もなんて、そんなのわからない。
それは皆も同じだったらしく、思わず顔を見合わせる。

「残念、時間切れー。正解は…教えない!」

ニヤリと笑ったコルネオが龍の頭に手をかける。
レバーにカモフラージュされていたそれが下ろされると、ガコンと音がして突然の浮遊感に襲われる。
床が抜けたと気付いた時には既に遅く、穴の中に吸い込まれるように落ちて行く。
何処までも続く暗闇の中、ただ誰かの温もりがあった。
それが、何処までも続く不安から救ってくれるようだった。



時間稼ぎと情報収集

prev | next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -