マムさんから聞いた話によると、闘技場での戦いを見ていたもう1人の推薦人である蜜蜂の館の主、アニヤン・クーニャンがクラウドに興味を持ったらしい。
アニヤンさんが興味を持つのは珍しいことで、人格者である彼はきっと手を貸してくれるだろうと、着替えを終えたあたしたちに教えてくれた。

ただ、その方法と言うのが"クラウドが女装すること"だった。
そうすれば、一緒にティファを助けに行くことが出来るし、何よりクラウドが一緒ならこんなにも心強いことはない。
それでも、いくらティファを助けるためだと言っても女装することを素直に受け入れるだろうかーーーそう心配しているのはどうやら、あたしだけ。
マムさんもエアリスも、クラウドならやるだろうと確信していて、確かに、ティファを助けるためと言えば嫌だとしてもやってくれる気がする。
実際、蜜蜂の館に着いたクラウドは、エアリスに半ば強引に押し切られる形ではあったけど、諦めたようにため息をついて、中に入って行った。

「わたしたちも行こっか」
「そうだね」
「楽しみだね、クラウドの女の子の格好。きっと、似合うと思うなぁ」
「うん。クラウド、綺麗な顔してるから、きっと美人さんになると思う」

若干、浮かれていることを自覚しながら、エアリスと一緒に蜜蜂の館へ入る。
受付のお兄さんには既に話が通っているようで、中へ入るように案内された。
ステージのあるフロアに入ると、キラキラと華やかな雰囲気に包まれていて、音楽に合わせて照明がステージを彩り、あたしもエアリスも思わずキョロキョロと辺りを見回してしまっていた。

「アニヤン・クーニャンのお客様ですねー」
「こちらのお席へどうぞー」

蜜蜂の格好をしたお姉さんに案内された席は特等席。
クラウドは既にステージ上にいて、あたしたちと目が合うと睨みつけた後で大きくため息をついた。
腹を括ったクラウドは、アニヤン・クーニャンの挑戦を受けるべく、ステージの指定された位置へと歩いて行った。



ーーーーーーーーーー



ソルジャーにはダンスも必須科目なのだろうか。
そう錯覚してしまうくらいクラウドのダンスは完璧で、あたしは勿論、観客やスタッフ、ステージ上のダンサーさんたちをも魅了していた。
色んなところで、今日のステージが過去最高の物だと絶賛する声ばかりで、あたしも心臓が痛いくらいドキドキと高鳴っていた。

そして、今はドレスに身を包んだクラウドが目の前にいる。
男らしいところや鍛えられた筋肉は、なるべく目立たないようにドレスでカモフラージュされてはいるものの体格差は出てしまい、少し骨太な女の子になっていた。
それでも、女のあたしなんかよりもよっぽど可愛くて美人で、正直なところ悔しくなるくらい。
本人は不服そうで不機嫌な顔をしているけど、それすら美しさを際立たせるだけだった。
隣にいるエアリスは、先程よりもテンション高くて「何も言うな」と言った不機嫌顔のクラウドを無視して「可愛い!すっごい可愛い!」と大絶賛。
クラウドには悪いけど、あたしもエアリスと同じ気持ちだった。

「クラウド、本当に可愛い!なまえもそう思うよね?」
「うん!クラウド元々顔が整ってるから、化粧映えもするんだろうなぁ。これは、女のあたしより断然可愛いから、ナンパとか気を…」
「そんなワケないだろ!どう見たってなまえのが可愛いに…っ!?」
「っ?!!?」

あたしの言葉を遮り、勢いよく言ったクラウドは途中で言葉を詰まらせる。
耳まで真っ赤にした顔で、口元を押さえると逃げるようにコルネオの屋敷へと歩き出した。
それが聞き間違いではないと言っているかのようで、あたしも釣られて顔が一気に熱くなる。

勢いではあったけど、クラウドがあたしのことを褒めてくれて、可愛いと言ってくれた。
その言葉が宝物のようで、反芻しては幸せな気持ちを噛み締める。

そんなあたしを見たエアリスは楽しそうに笑うと、手を取りクラウドを追い掛けた。
先を歩く、少し大股歩きのクラウドに「クラウドちゃーん、もっとお淑やかに!」と声をかけ、コルネオの屋敷を目指した。



着飾ったキミ

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