コンコンーーーそう響く音に扉を開けると、そこには迎えに来てくれたクラウドがいた。
「準備は出来ているか?」と確認してくれるクラウドに頷くと、微笑んでくれた。

「七番街スラムへの案内は任せて!実は何度か行ったことあるの」
「そうなのか?それにしては会わなかったな」
「確かに…あ、でも依頼があったときはまとめて済ますことが多かったから、もしかしたらその所為かも。用事が終わったらすぐに出発してから、ティファがいることも知らなかったもん」
「なるほどな」
「顔見知りの人もいたから、たまには遊びにおいでってご飯誘われたりしてたけど、なかなか時間取れなくて…あっ、あそこの出口が七番街スラムに行くには近いんだよ」
「…そうか」

そんな話をしながら伍番街スラムの出口まで進む。
普通はウォールマーケットを抜けるのだが、出来ればこんな時間に通りたい場所ではない。
あの街は今の時間帯が1番活気に満ち溢れているから危険は伴うけど、クラウドと一緒ならモンスターが出る陥没道路を進む方が何倍も安心できる。
それより何より、あの街を通ってクラウドが女の人たちに誘われているところをあたしが見たくないだけなんだけど。

「あれー?これは偶然ですなぁ」
「エアリス?!どうしてここに?」
「なまえが連れて行かれちゃうかなぁって思って。クラウド、なまえともっと一緒にいたいみたいだったから」
「俺は別に…!」
「いたくなかったの?」
「…そうは言っていない」
「ふふっ…エアリスの方が道詳しいし、一緒に来てくれると心強いよ。ね、クラウド!」
「ごめんね、クラウド。ふふ、お邪魔虫、しちゃうね」

悪戯に笑うエアリスを追って歩き始めると、後ろから大きなため息が聞こえる。
あたしはそれに笑って、ふと、いつまでも歩く気配のないクラウドが気になり振り返る。
頭を抱えている姿が昼間の秘密基地での出来事を思い出させて、慌てて駆け寄った。

「大丈夫?」
「あぁ…問題ない」
「なら、いいんだけど…」
「行くぞ」

歩き始めたクラウドをエアリスと一緒に追い掛ける。
それから、ウォールマーケットのことをクラウドに説明しつつ、陥没道路からの道を進んで七番街スラムを目指すこととなった。



ーーーーーーーーーー



無事に陥没道路を抜け、みどり公園へ辿り着く。
途中変な3人組には会ったけど、それ以外はモンスターを退治して進むだけで、何の問題もなかった。
何度かエアリスに揶揄われながら、大きなため息をつくクラウドだったけど、最後は無事3人でハイタッチをしたところ。
すっかりエアリスのペースで、それがクラウドは少しだけ不服そうだった。

「クラウド、こっち。なまえも、早く」
「…はぁ」
「ふふ…行こっか」

エアリスに誘われるがまま、公園のすべり台に登ったクラウドに続いてあたしも登る。
必然的にクラウドを挟む形で座ることになり、さすがに3人で横並びに座るとなると距離が近くなってしまう。
ドキドキと早まる心臓の音が、聞こえてしまうんじゃないかと思わず焦ってしまう。

「クラウドって、クラスファーストだったんだよね?」
「あぁ」
「そっか」
「それがどうかしたのか?」
「ううん、同じだと思って」
「同じ?誰と?」
「はじめて好きになった人」

それが誰を指しているかわかって、胸が苦しくなる。
あたしはその人のことも知ってるし、それ所かエアリスと会う少し前まで一緒にいて、それなのに彼が無事なことを伝えられなかった。
クラウドが無事だったんだから、きっとザックスだって無事なはずーーーそう信じてはいるけど、ザックスがその後どうしているかわからない。
レノと一緒に逃したし、きっと見つからない場所にいてくれている、はず。
それでも最悪の事態を考えてしまって、怖くてクラウドに聞けないでいる。

ザックスはどうしたの?
どうやってミッドガルに辿り着いたの?
クラウドの記憶とあたしの記憶が少し違うのはーーーどうして?

「もう行こっか」

エアリスはそう笑って、すべり台を降りていく。
「前、見なくちゃね」と言った笑顔がいつもと違って力なく、儚くて、あたしはなんて声をかけていいかわからなかった。
こんな風に気を遣うことエアリスは望んでいないけど、それでもいつも笑顔を貰っている分、何か返したかった。
そんな風にぐるぐると悩んでいるあたしに、クラウドはぽんと頭を撫でて「行くぞ」と一言告げてから、軽やかにジャンプして降りていく。

「降りられるか?」
「平気!」

少し揶揄うような、そんな笑顔を浮かべているクラウドを見て、小さい頃を思い出す。
元気のないあたしに気付いて、わざとらしくそう言ってくれたんだと思うと、落ち込んでいた気持ちも軽くなる。
もちろん、あたしはクラウドみたいに軽やかには出来ないので、エアリスと同じように降りると、2人とも笑って出迎えてくれた。

出入口近くの遊具が目に入り、自然と別れの時間が近付いていることに気付く。
伍番街スラムに帰ればエアリスには会えるし、これが永遠の別れになるとか、そういうものじゃない。
それなのに、何故かとてつもなく寂しくて離れ難くてーーーきっとクラウドもエアリスも同じように思っているんじゃないかって、そう思う。

そんなことを考えていると、ふと目の前の扉が大きな音を立てて開いた。
こんな時間に開くはずのない扉に困惑していると、そこから出てきたチョコボ車は、黒い長い髪の綺麗な青いドレスを身に纏う、スタイルの良い女の人が乗せていた。
何処か見覚えのあるような女の人に目を奪われていると、横にいたはずのクラウドが慌てたようにチョコボ車に駆け寄る。

「ティファ?!」
「え…?」

その声に視線を再びチョコボ車に戻すと、そこには5年前よりもずっとずっと魅力的になった幼馴染に面影が重なった。
どうしてティファが?ーーーそう呆気に取られていたあたしをエアリスが手を引っ張り走り出す。

ティファが向かった先は六番街スラム、通称ウォールマーケット。
無法地帯で有名なあの場所に、あんなドレスを着ていくなんてよっぽどのことだ。
事情はどうあれ、何となく嫌な予感がする。
ティファを助けなきゃーーーそう思い、エアリスと一緒にクラウドを追いかけた。



七番街スラムへ

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