レノの操縦するヘリでミッドガルの中心部にある神羅カンパニーへ向かう。
機内は2人きり、本当に他の兵士や他のタークスのメンバーもいなかった。
相棒がいるらしいけど、今は別件で一緒ではないみたいだった。

レノは本当に、あたしの出したバカみたいな条件を飲んでくれた。
対して出された条件は、レノと呼び捨てにすること、ただ、それだけ。
裏があるのかと警戒したあたしに「約束破ったりしねぇよ、と。ザックスたちには手出さないし、報告も誤魔化してやる」と言った。

さっき、初めて会ったときから思ってたけど、肌蹴たシャツにスーツを少し着崩して着ていて、ダルそうにしている。
向こうの世界で見た、繁華街にいた「ホスト」のような出で立ち。
実際に会ったことはないけど、こんな風に女の人の扱いになれているのかもしれない。
そんな見た目も相まって、不真面目な不良社員に見えてしまう。

「…レノって、タークスの仕事好きじゃないの?」
「俺は仕事は真面目に、どんな任務でも冷静にこなすタイプだぞ、と」
「でも、あたしの条件は飲んでくれたよね?あの後だって手伝ってくれたし、報告だって本当に誤魔化してくれた」
「…女の涙には弱くてな。それだけは冷静じゃいられねぇんだぞ、と」

そう言ってウィンクする彼に笑顔で返すと「つれねぇのな」と笑う。
こういう時、どう対応するのが正解なのか、恋愛事の経験値が少ないあたしではわからない。
実際、あんな風にウィンクされ慣れてないあたしの心臓は痛いくらいドキドキしてる。
もしかしたら、そんなこともわかっているから、レノはこの態度なのかもしれない。
こんな小娘相手にするワケないと思ったら、心臓の鼓動もいくらか落ち着くような気がした。

「で、なまえはなんであの2人の逃走に加担した?」
「大切な人だから」
「へぇ…どっちがなまえの彼氏なんだ?」
「なっ、彼氏とかそんなんじゃ!」
「ハイハイハイ。てーことは、なまえちゃんの片思いってワケね」

その言葉に押し黙ると、さっきよりも楽しそうに笑うレノ。
これは、完全にからかわれている。
どんな反応をしてもレノを喜ばせるだけだと思い黙ると「俺にもチャンスがあるってことだな、と」結局、楽しそうにしていた。

ヘリで向かう先、神羅カンパニーは、ザックスやクラウドが所属していたソルジャーや兵士たちがいる場所。
他にも色んな部署があって、その中の化学部門にある研究施設に連れて行かれるらしい。
別れ際にザックスが言ってた「籠の鳥」はあながち間違いではないだろう。
それだけ、あたしの力は貴重で特別なのはわかる。
マテリアなしに召喚するなんて、そもそも召喚マテリア自体が貴重なのに、連発も出来て、バレてないけど未来もみえるんだから、当たり前だ。

「…お前も古代種なの?」
「古代種って?それに"も"って?」
「…まぁ、俺はどっちでもいいけどな、と…もし、なまえが逃げたいって言うなら、俺は手を貸すぞ、と」
「"条件"厳しそう」
「今のなまえなら難しいかもしれねェな、と」

そうつぶやいたレノはそれから黙ってしまい、ヘリの中にはプロペラの音とモーターの振動音だけが響く。
古代種についても、今は答えてくれる気がないようで、諦めるしかないらしい。
ザックスも特に古代種については言ってなかったけど、あたしがやらかしたことは、その"古代種"と言うものの特徴に当てはまるんだろうなと思うしかない。

きっとこの世界にとって、貴重な存在。
この巨大な都市、ミッドガルを牛耳る神羅カンパニーが更に成長する為に捕らえて、独占したくなるような力。

犠牲じゃないと言われたけど、やっぱり痛いのとかは嫌だなぁ。
そんなことを薄ぼんやり思いながら窓の外に視線を移すと、たくさんの高層ビルと吹き上がる魔晄の光が見えてきた。
魔晄都市ミッドガルーーーあれだけ避けてきた場所にこうもあっさり来ることになるなんて。
ひっそり吐いたため息は、機械音でかき消され、あたしはただひたすらに、ザックスとクラウドの無事を祈った。



古代種

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