「…ほーんと、幸せそうな顔してんのな」

戻ってきたザックスは、クラウドに抱き締められた状態で眠るなまえを見ながら、毛布を掛けてやる。
ザックスの言葉通り、2人は幸せそうな顔をしていて、久しぶりにクラウドの意識が戻ったんだろうなと思った。
近くで集めてきた薪にファイアを唱えて火を起こし、眠る2人に再び視線を移した。

クラウドが言ってた幼馴染のなまえ。
村を出る時になまえがくれたネックレスは、クラウドにとって御守り代わりで、ずっと支えになっていたらしい。
一度見せて貰ったが、小さい花が連なるように2つヘッドの部分に付いていて、それぞれ小さい石が付いていた。
石の色はなまえの瞳の色ようなシルバーと澄み切った青空を思わせるブルーで、だからこそ、クラウドにとって御守りになったんだろう。

そんななまえと再会出来たことはクラウドにとっては勿論、ザックスにとっても嬉しい誤算だ。 これでクラウドは大丈夫だと思ったが、全てが順調ともいかない。
なんの因果か、再会したなまえは特異な体質になっていた。

まずは魔力量。
一般人として普通に暮らしてたなら到底身につかないようなデタラメなもので、ちょっとやそっと使った程度じゃ魔力切れを起こすことはなかった。
考えたくもないが、実験体として神羅に捕まってたんじゃないかと思ったが、どうやら違うようで、ひとまず安心した。
記憶が操作されている様子も、所謂ソルジャー特有の魔晄を浴びた証である特徴はなかったから、信じていいだろう。

次に未来予知。
本人も驚いてたぐらいだから、これも突然使えるようになったようだ。
正直助かると思いながらも、頭痛に苦しむ姿は見ていて気持ち良いものではないと、ザックスは思う。

最後にマテリアなしのシヴァの召喚。
これは、つい最近の出来事だ。
今でさえ、他の魔法と同じようにシヴァを喚び出すが、最初は記憶の混濁が見える程の頭痛に苦しみ倒れてしまった。
異質な体質だとしても、マテリアなしに召喚するなんてことはありえない。

貴重な召喚マテリアをザックスたちが持っていないことは神羅には把握されているし、何よりなまえが召喚する姿は通常とは異なっていた。
武器や防具に装備したマテリアを通して喚び出
すと言うよりは"なまえ自身から喚び出されている"ように見えたからだ。
だからこそ、なまえは神羅にとって犯罪者から「捕獲対象」となってしまった。
同じ捕獲対象でも、捕まれば確実になまえは一生神羅の実験体だ。

きっと、どれもなまえが他の世界に行っていたことが原因だろう。
最初に言われたとき、突拍子もない発言に驚いたザックスだったが、なまえがそんな嘘をつくような人間ではないことは理解していた。
クラウドから聞いていたのもあったが、実際に5年前に会った彼女と話して判断した結果だ。
己の目で見て、感じたことは信じられる。

魔力量と召喚獣はバレてしまっているが、片方だけでも既に貴重なサンプルだろう。
いくらクラウドを助けるためで、彼女が望んだことだとしても、巻き込み過ぎてしまったと、ザックスは反省する。

そこまで考えたザックスは、ふとエアリスのことを思い出した。
神羅の観察対象になっていた彼女は、古代種の血を引く最後の生き残り。
詳しいことはザックスにはわからなかったが、神羅カンパニーは古代種であるエアリスの協力を必要としていて、タークスが護衛任務を担当していたとか、そんな話を昔聞いたことを思い出す。
星と語り、星と生きる、かつて星を開拓したと言われる一族。
なまえの力もそれに似ている…それ所か当てはまることが多すぎるように思えた。

「…まさかな」

否定するように首を振り、2人の横にしゃがむとそれぞれの頭を撫でる。
たとえ"そう"だったとしても護ってやる、そう誓いを立てるように。

親友でもあり弟のような、そんなクラウドの大切な存在。
ニブルヘイムでのあの時も今も、大切な人間の為なら無茶するなまえを親友の変わりに護ってやりたい、そう願う。
ヒーローになりたいと、ソルジャーを志したあの日のように。



大切な存在

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