ゆっくりと開いた視界に薄暗い天井がぼやけて見えた。
ぼやけた視界の中、目を動かし起き上がろうと身体に力を入れる。なんとか身体は言うことを聞いてくれたものの、未だ意識はハッキリしない。
「榊さん!大丈夫!?」
「沢田…君…?」
慌てた様子で駆け寄ってくるツナに雪詠は確認するように呟いた。
「お、おい…大丈夫かよ」
珍しく心配そうに尋ねてきた獄寺に雪詠はへらりと笑い、大丈夫と答える。
「というか…いつ獄寺が…」
「あ、えっと…実はヒバリさんと獄寺君が助けてくれて」
「ツナは全く役に立たなかったけどな」
「う、うるさいなぁもう!」
居心地が悪そうにリボーンに声を上げるツナに雪詠は笑う。
「それで、骸は…?」
「それが、」
視界の隅で視界に入る深い緑色の服。
その光景になるほど、と眉を潜ませた雪詠はゆっくりと立ち上がった。
 
幻覚の中で見た光景。
あれはきっと、嘘ではない、記憶。
骸がこうやって意識を手放したから雪詠は今こうして意識を取り戻したのだろう。
あの記憶を見て、全てに納得したと同時に、特にこれと言って雪詠の中には何かを否定するようなことは思い浮かばなかった。
うちが沢田君達を恨むなんてことはない。マフィアを恨むことだった。
なぜならマフィアにも善と悪があり、恨むべき相手は悪側であるマフィアであるからだと理解したからだ。
 
「ついに…骸を倒したのね」
その声に雪詠はハッと現実へと引き寄せられた。
そこには腹部から血を流しながらも起き上がったビアンキ。
ビアンキに肩を貸すため獄寺がゆっくりと歩み寄る。
――違う。
「いっちゃだめだ!」
その思ったのは雪詠だけでないらしくツナが声を上げた。
「これくらのケガ大丈夫っスから」
そう言って手を差し伸べた獄寺の頬を何かが掠る。
「まぁ!私ったら…!!」
獄寺の頬を掠ったのは間違いなくビアンキの手に握られた三又槍。
目を覚ますようにとリボーンがビアンキの頬をぺちぺちと軽く叩く。しかし、ビアンキはまるでそれを狙っていたかのように三又槍を振りかざした。
それを避けたリボーンを見ながらもツナは小さく呟いた。
「………ろうくどう…むくろ…?」
「クフフ、また会えましたね。」
そう言ったビアンキの左目には"六"の文字が浮かび上がっていた。
「で、でた――!!」
悲鳴を上げるツナの前に獄寺が立つ。
「10代目ここはオレに!!」
「だけど相手は…」
「臨・兵・闘・者!!皆・陣・列!!」
「魔よけかよ!!」
獄寺に雪詠がツッコミの声を上げるが、どうやら獄寺の攻撃(魔よけ)は聞いているようでビアンキは唸り声を上げながらも倒れた。
倒れたビアンキに恐る恐るツナが近付く。そんなツナに獄寺が近付いた。
「オレ、やりましょーか?」
「獄寺く…骸!!」
素早く獄寺――否、骸の攻撃を避けたツナに骸がほぅ、と口角を上げる。
「初めてですよ、憑依した僕を一目で見抜いた人間は……つくづく君は面白い。」
そんな骸にリボーンは間違いないと核心をついた。
「憑依弾は禁弾のはずだぞ。どこで手に入れやがった」
リボーンの言葉に骸は笑ってみせた。
「気が付きましたか。」
憑依弾とはその名の通り他人の肉体にとりついて自在に操る弾。
しかし、その弾は扱い方がムゴすぎると禁弾とされた方法だった。
「さあ次は君に憑依する番ですよ。ボンゴレ10代目。」
その言葉にツナは目を見開いた。
「2人共、あの剣に気をつけて。多分あれで傷付けられたら憑依されるから。」
雪詠の言葉に骸がほぅ、と目を細めた。
獄寺の手から投げられた三又槍はビアンキの手に渡る。
「よくご存知で。もっとも僕はこの行為を"契約する"と言っていますがね。」
雲雀に傷を付けたその身体は意識を無くしたように力なく地に伏せた。
ゆらりと立ち上がった雲雀に雪詠は危ない!と声上げ、ツナの腕を引き寄せる。
雲雀が振りかざしたトンファーは空を切り、その身体は地に伏せた。雲雀の身体は限界らしく雲雀の身体から気配が消える。
次に気配を感じた場所へと視線を向けたツナは声を上げた。
そこにはビアンキも、獄寺も身体を起し、こちらを見ていたのだ。
どういうことだと目を見張る中、扉が開かれる音に雪詠はそちらを見てはっ、と息を呑んだ。
扉を開いて入ってきたのは見覚えの黒曜生の2人組み。
骸が4人という状況にリボーンはぽつりと呟いた。
「こいつは圧倒的にやべーぞ」
 
 
禁弾
(彼女は未だ見つからない)

 
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