「っと、」 雪詠は開いた窓に手をかけ、体を引き上げた。 私服にズボンを履いてきてつくづく良かったと思いながらも雪詠は周囲を見回す。 瓦礫の上をよじ登り、雪詠が窓から入ったそこはボーリング場のようで所々ピンが倒れている。 「…いないか」 やっぱり、こういうときは一番上だよね。 雪詠は立ち上がり、砂が付いたであろう服を叩いた。 (…というか、沢田君達になにも言ってないや…大丈夫かな) 周りをきょろきょろと見回していればソファーの陰に大きな影を見つけた。 ドキドキと脈打つ心臓を押さえ、興味本意でソファーを覗き込めば見覚えのある本が隠すように置かれていた。 (フゥ太…) 本の持ち主に思いを馳せた雪詠は恐る恐るも、それに触れた。ゆっくりとした動作で本を開き、数枚ペラペラと捲っていれば「並盛中ケンカの強さランキング」という文字が目に入る。 ズキズキと痛む頭を我慢し、1位の名前をそっとなぞった。 (ズレテル) ズキリ、と頭痛がそれ以上は止めろというように痛んだ。 やっぱり、忘れかけてるんだね。小さく零された雪詠の言葉は誰にも聞かれることがなくぽつりと消えた。 本を閉じ、部屋を出ようとしたところで自分を呼ぶ声が聞こえ、雪詠は思わず苦笑した。 沢田君達、以外に結構早かったなあ。 ビアンキに心配したのよと睨まれた雪詠は小さく謝りながらも肩を落とした。ツナが大雑把にさきほどの出来事を説明してくれ、現状を理解する。 (ニセモノ…か) 3階に上がる階段を上り、映画館だったであろう戸を押したその先にはステージの上にある2人がけのソファーの上で、こちらを見つめる男がいた。 「また会えてうれしいですよ」 そう言って男はにこりと笑みを浮かべた。 その男の姿にツナは目を丸くし、さきほど会った黒曜生だと説明した。しかし――彼ただの黒曜生ではなどではなかった。 彼こそ、本物の六道骸だった。 後ろで戸が閉まる音がして、雪詠達は後ろを振り返る。 「フゥ太!」 フゥ太の姿に無事だと分かった面々がほっと胸を撫で下ろす。フゥ太に駆け寄ったビアンキの腹部に、刃物が突き刺さった。 突入!! (心臓が脈打った) ←|→ |