今の悠には骸の考えていることが手に取るように分かっていた。
世界大戦――…
それが彼の望み、と知っていながらも悠は彼の望みを否定することなど出来なかった。
例え、悠自身がそれを望んでいないとしても、同じ境遇を味わった者として、同士の気持ちは分かる。今の悠には、この戦いというものは手を出してはいけないものだったのだ。
そして、邪魔されては、手を出されては困るもの。
これは決して、自分達が安易に手を出していいものではない。
 
「悠…?」
それが例え、雪詠だとしても。
「操られてないんでしょ?…なんで、」
「お前も"視た"だろ。」
悠の言葉に雪詠は肩を跳ね上げた。
「俺だって、骸の言っていることは理解できねぇ。だけど、俺らは境遇者だ。だからこそ、手を出したら駄目なんだ。」
「でもっ…!」
「それが"沢田綱吉"が絡んでいたとしたら、尚更だろ?」
雪詠は苦々しげな顔をし、力強く悠を睨み付けた。
「っ…!」
雪詠の蹴りを避けた悠は手刀で腹部を攻撃する。一瞬足元をふら付かせた雪詠だったが、右足に力を入れ懐目掛けて走り出し、肘で殴りあげた。
「く、」
身体を捻らせた悠が後ろ蹴りを喰らわす。それを打ち身無しに受け取った雪詠は苦しげに眉を潜めた。
苦し紛れに腕を横に大きく振りかざすが虚しく空を切るだけだ。
「もう息、切れてるよ」
「っるさい!」
悠の言葉に雪詠が拳を振り上げるがそれは軽々と悠に止められてしまう。
「……どうしても、駄目なの?」
「…あぁ。」
「仲間だよ?」
「…あぁ。」
「もしかしたら…死んじゃうかもしれないんだよ?」
「…そのときは、俺が止めるよ」
「……そっか」
悠の言葉に雪詠は顔を伏せた。
ツナがグローブで炎を灯す姿を見た悠は眉を八の字にし、へらりと笑った。
「沢田なら、大丈夫。」
悠の言葉と同時に、ツナが骸を壁に撃ちつけた。
 
 
死ぬ気の炎
(知ったからこそ、)

 
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