「静かね…」 ビアンキの言葉に雪詠は頷いた。黒曜センターへ続く道路は車一つない静けさを保っている。 そんな中、黒曜センターを柵越しに見上げたツナは思わず目を白黒させた。 「すでに不気味だ」 「ここは昔、黒曜センターっていう複合娯楽施設だったんだ。」 リボーンの言葉にツナが首を傾げる。 「黒曜センター…?」 あっと声を零したツナの頭に薄れ掛けていた記憶が蘇る。 「改築計画もあったらしいが土砂崩れがおきてな。それから閉鎖してこのありさまだ。」 獄寺は鉄格子に絡められた鍵に触れる。 「奴らはここから出入りはしてませんね。どーします?」 「決まってるじゃない。正面突破よ。 ポイズン・クッキング、溶解さくらもち」 「うわっ」 さくらもちに触れてしまった鍵は見る見るうちに解けていく。 その様子を見ていた雪詠は思わず顔を引き攣らせた。 「まじすげーなー超本格マフィアごっこだな」 山本の言葉にツナは頭を抱える。 「だから山本〜〜!!」 「ツナ、来たことがあんならお前が案内しろ」 リボーンの言葉にツナは声を上げる。 「来たっつっても超昔だぞ〜〜!」 渋々と靄がかった記憶を探り出しながらもツナは喉を唸らせる。 「俺が覚えてんのはたしか、ゲート入ってしばらくいくとガラスばりの動植物園があって…」 「そんなものないじゃない。あなたの目はフシ穴だわ」 ビアンキの言葉にツナと獄寺が声を上げる。 だが、実際目の前にはただ広がる平地があるだけで2人は押し黙るしかない。 「なにこれ…あし、あと…?」 雪詠の言葉に山本は視線の先を見つめた。 「犬か?にしゃあでかすぎるな」 「爪の部分…血よ」 「ひいい…」 ビアンキの言葉にツナが身体を震え上がらせる。 「で、でも山じゃないんだしこんなとこにいるわけ…」 「そ…そーだよね。こんなでかい動物いなかったはずだし……」 「あら?」 ビアンキは木の幹に触れる。 「えぐられてるわ……」 「何かの歯型だな」 リボーンの言葉にさすがに雪詠も冷や汗を流した。 木の幹をえぐる動物なんて聞いたことねーよ!! 「あのオリ…」 「オリ…?」 「よく見ろ」 目を凝らして見たオリの柵は、どう見ても食いちぎられていた。 「10代目!気をつけてください。なんかいる!」 獄寺が声を上げたと同時に影が視界の端を捉えた。 「後ろ!?」 ドッ、と響く低く鈍い地を蹴り上げる音。 皆が見上げた先には鋭い歯に目をぎらつかせた狼がいた。 反応した山本が山本のバットで狼を押さえ込むが微かに香る匂いに山本は目を見開いた。 「……こいつ!!すでにやられてる!!」 瞬間飛び散る血飛沫 その直後に複数の狼が周囲を囲む。 「一体何が起きてんの〜!?」 「狙われてるわ!」 「ツナ、急いで!!」 ビアンキを先頭に走り出した中、妙な音にリボーンが眉を潜めた。 「かかったびょーん」 黒い影が地面を突き破って飛び上がった。 咄嗟にその影から避けた山本は思わず背中から地面に倒れる。そして倒れた地面からはミシミシと聞こえる嫌な音。 気付いたときにはバリン、と硝子を破った音が響いた。 「い、いいい今なんかいなかった…?」 雪詠の言葉にツナが静かに頷く。 「人影に見えましたが………」 獄寺の言葉を聞きながらも穴の開いた地面へと駆け寄った5人は中を覗き込む。 「ツナの記憶は正しかったな。 動植物園は土砂の下に埋まっちまってたんだ。」 「じゃあここ屋根の上〜〜!!」 「……また破れたりしないよね?」 雪詠の言葉を他所にツナは下に向かって声を上げる。 「山本大丈夫〜!?」 「あのバカ足ひっぱりやがって!」 眉を潜めて言う獄寺に思わず苦笑をしながらも雪詠は山本へと視線を戻した。 (…ん?) 雪詠と同じく違和感を感じたツナが山本の名を呼ぶ。 「右に何かいる!」 それは低い唸り越えを上げ、ギラギラとした鋭い目を山本へと向けていた。 まるで、肉食動物がやっと餌にありつける、逃がさない、というように。 迫る影 (目が合った、気がした) ←|→ |