「どーだったんれすか――?並中のボスの?スズメだっけ?アヒルだっけ?」
「ハズレでしたよ。歯をとるまで横になってもらってます」
「っひゃ〜〜生きてんのかな〜〜?そいつ」
犬の言葉を聞きながらも僕は微笑んで見せた。
並盛の頂点に立つ男はあれだけの力だったのだ。確かにそこらの人間に比べてなら格が違う強さだろうが、僕達が今まで見てきた世界の中ではどう考えても下っ端の力。
生きているかなんて僕には関係のない事実だ。犬の言うとおり生きてるか疑問だ。それか虫の息か。まあ、どちらにせよ僕には関係のないことなんですけどね。

「に、してもこんらことにいるなんてね〜。」
「そうですね。彼女もよくマフィアと馴れ合えたものです。」
そう言いながらも僕は横に眠る彼女を優しく撫でた。
ずっと会いたくても会えなかった、愛おしい彼女。彼女を探し出すまでにどれだけの時間がかかったかなんてことは関係なかった。彼女に出会えただけで、それだけで良い。
雲雀恭弥と行動を共にしていたことは腑に落ちないが、これから彼女は自分だけのものだ。
「もう1人も同じところにいるはずなので時間の問題ですね。」
「楽しみらびょん」
そう言って嬉しそうに犬は笑っている。犬は彼女が大好きでしたものね、仕方がないことです。

「そーいえば悠は覚えてたんれすかー?」
「残念ながら、と言うべきですね。覚えていませんでした。」
「…どうするんれすか?。」
「そうですね。」
先ほど話したときの違和感はきっと彼女が"あの時"の記憶を失っているから、でしょう。
時間は短かったといえ、僕らは同じ空間にいたことがある。そのとき彼女と出会い、僕らの世界は変わった。だからこそ、彼女らに会いたくてここまで捜しに来た。
するとどうだ、彼女らはマフィアと関わりを持っていた。そのときはどうしようもない感情が溢れ出たが、今は違う。
例えマフィアと馴れ合っていたとしても違う。彼女らは記憶を失っているから、マフィアと馴れ合ったのだ。
記憶が戻れば、きっと――

「そういえば千種は?」
「柿ピーは3位狩りにまいりました。そろそろ面倒くせーから加減できるかわかんねーって」
「その気持ちもわかります。なかなか当たりが出ないものね」
 
 
如意
(君らなら、きっと)

 
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