薄暗い中に見えたチカチカとした無数の光。
その光は酷く冷たく、希望どころか絶望と恐怖を植え付ける。
――伸びて来た影は、誰のモノだっただろうか。
迫り来る細い影が軽く握ったソレラ。近付くソレラが堪らなく怖かった。
恐怖。
感じたのは、それだけ。
ヒュッ、と肺の奥から情けない二酸化炭素を吐き出す。
息の仕方を忘れそうになりながらも、必死に酸素を吸い込んだ。
鼻の奥から込み上げたモノはなんだっただそうか。
目の奥からじわりじわりと姿を現したソレの存在なんて、理解できないほどに混乱していた。
目元が熱い。息が出ない。逃げ出したいのに手も、足も動かない。
最後に見えモノだなんて、分かりたくもなかった。


 
「――ッ、ハッ!!」
暖かな光が目を刺激する。肺の奥から吐き出される二酸化炭素。
上半身をゆっくりと立て、ゆっくりと息を繰り返し息を整えた。
夏の終わり頃だと言うに吹き出した汗。手の甲で汗を拭いながらも俺は前髪を掻き上げた。
(……今の、なんだよ)
ようやく言えた言葉はそれだけ。
この世界に来る前に視ていた夢とは全く違う内容。薄らぎ始めた夢の内容に、悠はそれを必死に繋ぎとめようとするように硬く瞼を閉じた。 
「なにまた寝ようとしてるの」
自分に投げ掛けられた言葉に悠はハッと意識を引き戻す。
手に握りしめていたシャーペンと指の間からは暑いからなのかじわりと汗が滲んでいて気持ち悪い。
額に浮かんだ冷や汗かも分からない汗を拭いながらも悠は声の元へと顔を向けた。
いつもよりだらしないへにょりと今にも溶け出しそうな表情を浮かべながらも悪い悪いと反省の色を表さない姿に雲雀は呆れた、というように溜め息を吐く。
「気付いたら寝てた。」
「寝てる暇があったら早く調べなよ」
「あーうん。いや、まあ、そうなんだけど、さ。」
歯切れの悪い言葉に雲雀はなに、と鋭い視線をこちらへと移す。
悠はシャーペンを机に置くと、近くに置かれていたノートパソコンと先ほどまで何かを書き込んでいた紙を持ち雲雀の元へと歩み寄る。
寝る直前まで書き込んでいたそれは、未だ途中ながらも勘の良い人間ならば一目で分かる表。
「途中までしか書いてないけどお前ならこれ、分かるだろ?」
悠に差し出された紙を受け取った雲雀は静かに文字を目で追う。
次第に納得したように口元を緩めた雲雀はそれで?と先を急かした。
「見ての通りそれなりに力がありそうな奴ばかり狙われている。しかも歯を丁寧にも抜きながらな」
「で、その歯の数がなにかの順位みたいだと」
「そうだ。最初風紀委員狙いだと思っていたが…狙われてるのは喧嘩がそれなりに出来る奴。つまり、風紀委員は関係ねえってことだ。」
「ふぅん。で、目星の奴は?」
「最近黒曜に引っ越して来た3人組。」
「主犯は?」
「名前は六道骸、だそうだ。それと他の風紀委員に調べさせて溜まってる場所、特定できた。」
悠の言葉に雲雀は口角を上げた。
「場所は?」
「黒曜ランド。」
 
 
悪夢
(あれは、何?)

 
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