チョコバナナの屋台を手伝うことになって獄寺君と山本と一緒に屋台に立つ。
さっきはヒバリさんと氷室君が風紀委員の仕事でとショバ代を請求しに来たときはびっくりしたけど、ショバ代を大人しく渡せば害なく帰ってくれた。
よかったーと胸を撫で下ろしていれば聞きなれた声がオレを呼ぶ。まさかと思い声の元を辿ればそこにいたのは予想通りの人。
「沢田君?」
「榊さん!!」
目の前にいたのは浴衣姿の榊さんで、いつもとは違う大人っぽい雰囲気に一瞬ドキリと脈打った。いつもと違って髪をお団子にしていて、とても綺麗だ。
榊さんの隣に立っていた京子ちゃんが目を輝かせながらもオレを見つめる。
京子ちゃんは榊さんと違って綺麗というより可愛いという言葉がピッタリだ。
その隣にはハルもいる。ハルはいつもしつこいけど、実際本当に可愛いかったりするからなんでオレなんだろと毎回困っていたりする。それに普段女の子に好き好き言われるなんてことはなかったから倍の理由で困っていたりするのだが。
「すごーい、お店してるの?」
「うん。まあ…」
「でもちょっと残念です。みんなで花火見ようって言ってたんで…」
「じゃあうちらは行くね」
「う、うん。バイバイ」
3人の後姿を見ながらオレはハァと溜め息をつく。
一緒に見たかったな、花火。
「でも全部売っちまえばオレ達も花火見に行けんじゃん?」
山本の言葉にハッとする。そうか、花火の前に終わらせたらいいのか!一緒に頑張ろうと言えばそうだなとの返事。2人とも気合が入ったみたいだ。
結局始めは怖がられてた獄寺君や山本とイーピンのお陰で残りは1箱になった。
席を外した2人(イーピンはすでに子ども戻った)を尻目に背伸びをする。
あと少し!なんて思っていればまさに今流行りひったくりに店の売り上げが盗まれた。
犯人を追ってこれば神社の前で、見覚えのある…夏の、ライフセイバーにセンパイ達がいた。
2人に知らせようかと後ろを見ても囲まれたみたいで逃げ場はない。どうしようか、なんて考えていれば聞き覚えのある声。
そこにいたのはヒバリさんと氷室君だった。
気付けばいつの間にか打たれた死ぬ気弾で、後から加勢に来た獄寺君と山本たちと雲雀さんにどうにかこうにか売り上げを取られないように死守できた。といってもほとんど氷室君のお陰なんだけど…
そしてその死守してくれた本人はと言えば仕事は終わったらしく山本の隣で地面に倒れこんでいた。
そーいやお前チョコバナナ2つとも食ったのか?という質問に対して1つは雲雀にあげた、との返答に少し…いや、かなり焦る。ヒバリさんにチョコバナナとか想像できねー!!
カラカラと山本が笑っているのを尻目にオレは空を見上げた。
気付けば時間も花火直前で、まにあわないなと諦めていればさっき会った3人が大きく手を振っている。
「オレが呼んだんだぞ」
「リ…リボーンおまえ…」
「かんちがするなよ。ここは花火の隠れスポットなんだ」
リボーンの言葉と同時に上がる花火。
隣に座った榊さんが綺麗だねっと笑顔で言う。
慌てて頷きながらもオレは花火に目をやった。
目の前では京子ちゃんとハルが楽しそうに笑い合っている。
そんな光景を見て、なぜかオレはいつもの"いいな"との気持ちは少しもなかった。
むしろ、嬉しいとさえ思える。
友達と見る花火が初めてだったから?京子ちゃんと一緒に見られることだけでも嬉しいから?それとも、
オレは隣に座る榊さんをチラリと見る。
嬉しそうに目を細めて笑う榊さんに胸が脈打った。そして気付く。
「オレ、京子ちゃんじゃなくて榊さんが好きなんだ…」
オレは思わず小声でそう呟いた。慌てて口を塞いで隣を見てみるものの、榊さんはなにも聞いてなかったみたいだ。
ホッと胸を撫で下ろしながらもオレは打ちあがる花火に目線を移す。
オレ、これからどうすればいいんだろう。
 
 
花火を見て
(思い耽る)

→3章
 
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