『応接室ぅ?』
リボーンの言葉に悠と雪詠は声を合わせた。
ファミリーのアジトを作ると突然言い出したリボーンに悠はただ眉を寄せるばかりだ。
「アジトって…つか、ファミリーってなんだよ。普通に直訳して家族であってる?」
「お前はもう立派なボンゴレファミリーの一員だからな。」
「だからそのファミリーってなんだよ…そして次はアサリか?」
どういう事だとうんうん喉を唸らせる悠に雪詠は苦笑をもらす。
雪詠はリボーンの言っている意味を理解しながらも、あえて口に出さないで自分等の身を守っていた。
リボーンはぴょんとジャンプをし、雪詠の腕に収まる。
「まさかこんな自然にキャッチしてしまうなんて…」
「…はは、」
初めは全く動きを読み取ることができなかったリボーンの動きを理解してしまうということは確実に一緒にいる時間が増えていることを表す。
雪詠は複雑な気持ちのままリボーンを見た。
「それで応接室…、だっけ?」
「そうだぞ。ツナたちは先にいってるぞ。」
「沢田君達も…。」
追いかけろ、と上から目線で命令するリボーンに、2人の口から思わず溜め息が漏れた。
「応接室ってどこらへんだ…?」
「確かこっち…だった、と思う。」
雪詠に手を引かれ、人気の少ない校舎へと足を進める。
あそこ、と雪詠が指差した先には確かに応接室とのプレートがかかっていた。
「おっ、榊と氷室じゃねーか!」
「2人とも!!」
「げ」
「…うぃっす。それから獄寺、げ、ってなんだ。」
「うるせーのが増えたからめんどくさくなっただけだ」
「むしろお前が一番うるせーよ」
「ンだと!?」
無意識にぽろりと零した雪詠の言葉に獄寺は額に青筋を浮かべた。
「てめー女だからって手加減すると思うな「はいはい。そこまで。」
雪詠と獄寺の間に悠は割って入り、なだめるようにどーどーとその場を静めた。
「え、っと…それで2人とも、こんなところにどうしたの?」
「あ?…ああ、それはリボーンに…」
そう言って雪詠のほうを見た悠はあれ、と呟く。
「いねえ…」
「えぇー!!」
なにやってんだあいつー!と頭をガシガシ掻くツナに悠は思わず苦笑した。
「それで、お前等はここに入るのか?」
「え、と…一応そのつもりって言うか、命令っていうか…」
ツナの言葉に悠は心の中でこっそりと同情した。
「へ〜〜、こんないい部屋があるとはね――」
「あ、山本いつの間に。」
「オレたちもいこっか」
「そうだな」
すでに応接室のドアを開き入ろうとしている山本の後ろ姿にツナと悠は頷き合う。中を覗き込んでいるのか応接室の前で棒立ち状態になっている3人をツナはすり抜けた。
「はじめて入るよ、応接室なんて」
「沢田君待って!」
「え?」
雪詠の言葉にツナは目を丸くした。雪詠の声に反応した悠が咄嗟にツナの腕を掴んだ。
「危ない!!」
その瞬間、腕に走る鈍い痛み。
ツナを庇うように包み込んだ手からたらりと血が流れ落ちた。
「のやろぉ!!ぶっ殺す!!」
獄寺が頭に血を昇らせ、鈍い痛みの原因である男を睨み付ける。めんどくさいと言わんばかりの顔をした男は――トンファーを手に獄寺に攻撃を喰らわせた。
「てめぇ…!!」
形相を変えた山本が獄寺に続く。しかし、山本は獄寺同様呆気無くも腹部に蹴りを喰らいその場に崩れ落ちた。
「ごっ…獄寺君!!山本!!」
「あとは君達だけだよ」
「ひ、」
未だ応接室の前で立ち尽くす雪詠に男は視線を移した。男の威圧感からなのか、雪詠は青白い顔でドアに寄りかかる。
「4匹」
ひゅんと空気を切る音に雪詠は目を瞑る。だが、
「おい、お前はひ弱な女子に手を出すってのか?」
「…まだ動けたんだ?」
男のトンファーには悠の手がしっかりと絡みついていた。
男は少しは暇つぶしになるかと内心呟きながらもトンファーから悠の手を振り払う。
「雪詠、大丈夫か?」
「う、うんっ。」
「…獄寺と山本頼む」
「――分かった。」
男の視線が完全に悠に向いているのを確認した雪詠は獄寺と山本の近くへ駆け寄る。
崩れ落ちた獄寺と山本の近くには先ほど悠によって庇われたツナが顔を青白くさせながらも2人に寄り添っていた。
「…2人とも、気絶してるだけみたい。」
「ほ、本当!?」
「うん。」
「よ、良かった…!!」
雪詠の言葉にツナは安心したように胸を撫で下ろす。でも、とツナは心配そうな表情で悠を見れば、そこにはトンファーを勢いよく悠に振り下ろす場面があった。
ひ、と思わず目を隠してしまいになるのを押さえれば悠がそのトンファーを丁寧に避けきる姿が目に映った。
すごい、とツナは素直に思う。
自分ならば恐怖で目を閉じてしまうだろうに悠はといえば、眼鏡の奥の目をしっかりと開いていた。
(――…あれ?今、目が青く見えたような…?)
眼鏡のレンズに反射した光なのだろうか、と不思議に思っていれば男が地を蹴り、再び勢いよくトンファーを振り翳す姿が見えた。
それに反応した悠が後ろに下がり、それを避けたと同時に回し蹴りを喰らわせる。しかし悠の足は当たることなく地につけられた。
休む暇無く迫り来るトンファー。そのトンファーを右手で押さえ、くるりとトンファーを軸に悠は男に拳を振り上げた。
瞬時に男はそれを交わす。そんな男に――悠はニヤリと笑みを浮かた。
男の腕を掴み、勢いを使って壁へと叩きつける。男は悠を見、口角を上げる。反撃だというようにトンファー握り、悠に攻撃をしようとした瞬間――
「そこまでだ」
その場を静止する声が聞こえた。
そこには窓の外からレオンを使い傍観していたリボーンがいた。
リボーンの口角は上がっており、どことなく嬉しそうだ。
「やっぱつえーな、おまえ」
「君が何者かは知らないけど、僕の今の邪魔をしないでくれるかい」
腹立たしげに呟いた男が悠から離れ、リボーンにトンファーを振り上げた。
だが、それは軽々とリボーンに止められる。
片手で軽々と止められることに目を見開き、男は更に嬉しそうに口角を上げた。
「君もすばらしいね」
ギラギラと光る男の目を見たリボーンはおひらきと称し、爆弾を取り出した。
リボーンの視線に気付いた雪詠が慌ててツナを呼び、肩で息をする悠に声を上げる。雪詠を見た悠がそれに気付き、山本を抱き上げた。
どうしようかと慌てていたツナにリボーンは迷いなく死ぬ気弾を打ち込み、獄寺と雪詠を抱え窓から飛び降りた。
山本を抱えた悠が顔を青白くさせながらも仕方がないと決心を決め、窓から飛び降りる。
リボーンがレオンでパラシュートを作り、宙に浮くのを感じながらも悠は山本が落ちないようにと必死抱えた。
爆発の起こった応接室を横目で見たとき――なぜかあの男と目が合った気がした。
 
 
雲雀恭弥
(気になる君)

 
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