「うわっ!?なにアレ!?」
「パンツ一丁で頭に火ィ乗っけた変態野郎が沢田に見えたけど俺は信じない。」
「しっかり見てるじゃん!!」
隣をものすごいスピードで過ぎ去って行った人影にありえねえと呟いた悠に雪詠は思わず声を上げた。
未だありえないと目の前で見た事実に首を振る悠に雪詠はだから今のが現実だよ!!と声を上げる。
「しかもなんか人を巻き込んでたとか」
「まあ、」
人間業じゃねえ、と呟いている悠に雪詠が思わず頷きそうになったとき、後ろからあれ?と聞き覚えのある声が零れる。
「榊さんに氷室君!」
「え、さささ笹川さん!?」
「ふふっ。初めましてだね。私、2人の同じクラスの笹川京子っていうの!よろしくね!」
「う、うんっ。初めまして!」
そう言いながらもニコリ、と屈託のない笑顔を向けられた雪詠は慌てて京子の言葉に返事を返した。
悠はこっそりと雪詠の身長に合わせて尋ねる。
「雪詠、よく名前覚えてたな。」
「結構有名だし、中心メンバーだから…」
「なるほど。」
「氷室君もよろしくね?」
「…おう、よろしく。」
京子の言葉に悠は微笑み返した。
「えっと…それで、笹川さんが持ってるのは鞄…だよね?なんで2つも持ってるの?」
雪詠の言葉に京子は微笑みながらも腕の中の鞄を見た。
「これ、お兄ちゃんの鞄なの。途中で落っことして行ったみたいで…。あ、私のことは京子って呼んでもいいよ?」
「あ、ありがと…分かった。うちのことも名前でいいよ!」
「ふふっ!ありがとう、雪詠ちゃん!」
京子の言葉に雪詠は少し慣れないちゃん付けに思わずこそばゆさを感じる。
よくよく考えてみれば最近同じ歳ぐらいの女の子と関わるのはまだ転入して時間があまり経っていないからなのか、少ない。
悠とは関わってるものの、やはり普通の女の子と話したいのだろうと悠は僅かに目を伏せた。
「……その鞄重そうだな…俺が持つよ。」
「え?でも…」
「大丈夫だよ。それに俺は男だし、」
「え?氷室君は女の子でしょ?」
「………は、」
京子の言葉に雪詠と悠は思わず動きを止めた。そんな2人に疑問符を飛ばしながらも首を横に傾げた京子がどうしたの?と言ってくるだけだ。
「な、なんで、」
「?なんとなく、だけど雰囲気とか仕草とか見てたら女の子かなぁって。」
「そ、そうなの…か?」
思わぬ展開に悠は珍しく混乱しているようで雪詠は思わず悠のその姿に笑う。
「あ、でも大丈夫!私、秘密にしてるから。」
「え、あ、ああ…あ、ありがと」
ぎこちなくお礼言う悠に見た京子は再び笑顔を浮かべた。
学校の正門を潜ったところでお目当ての人物を見つけた京子があ、と声を上げ走り出す。
「お兄ちゃーん!!もーカバン道におっことしてたよ!」
そんな様子を眺めながらも悠は俺等は先に行くかと足を進めた。
「あ、ありがと、氷室君!」
「ふ、2人ともー!!」
後ろからツナの助けを求める声を2人はあえてスルーするのだった。
 
 
笹川了平
(影から応援してるな)

 
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