雪詠に付き添い二階に上がった悠は自室を眺める雪詠から離れ、窓から外を眺めていた。
青い空に綺麗に並ぶ住宅。近くから小さい子供達の声が聞こえるような、どこにでもある、ただの住宅街。
 まるで自分達が来ることが当然だったかのように用意されたこの家。
1人暮らしでアパートで住んでいた悠にとってこの家は、とても広く感じるものだった。家族が多く、一軒家に住んでいた雪詠には感じることは無いのだろう。
机の上に置かれていたパスワードのかかっていないノートパソコンを無造作に立ち上げていれば、その隣に見えたのはよく目にしていた形の通帳。その通帳を手に取り、恐る恐るもペラリと捲ってみればそこには見たこともないような0の数が並んでいた。あまりにもその額が多すぎてくらりと目が回った。
記されている持ち主の名前は――やはり、自分。
思わず放り投げそうになった動作をぐっと堪え、悠は再び通帳へと目をやった。
 いや、なにこれ。めっちゃ怖いんですけど?なんなんですかこの0は!!
一十百千万と並んだ0の数を追いかけていれば最後にたどり着いた数は億単位。
怖いを通り越して恐ろしいと感じる通帳に放心していれば、隣の部屋のドアがバタリと勢い良く開けられる音がした。
「悠悠悠!!うちの部屋?の机に通帳があってすすすすすごいことに!!」
「やっぱりお前もか…」
ここまでくれば予想の範疇である。
「募金しよう。」
「なんか大丈夫!?でも、これに名前が書いてあるし…ってことはうちらのでしょ?つまりこの金は使いたい放題…」
「戻ってこい!!気持ちは分かるけど戻ってきて!?」
「おおっとつい本音が…と、とりあえずこれは…うん。念のために持っておこう」
「そ、そそうだな…。」
2人でうんうん頷きながらも震える手が引き出しの中に閉まった。奥に入れたから大丈夫なはず、だ。うん。
冷や汗が今にも流れ出しそうだったのでなんとか気を落ち着かせながらも立ち上がったパソコンのネットワーク接続を確認してネットを立ち上げる。このお金も気になるが、まずはこの地域について知らなければ生きて行けない筈だ。
通帳のほうが気になるが。
「…て、まずこの地域すら知らねえんだった…。」
ダメじゃんと自分にツッコミを入れていれば雪詠がリビングに行くからとの声がかかったので諦めて付いて行くことにした。
 
 
気になる
(主に通帳が)

 
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