学校長に話しを通した後、自由に見学してもらって構わないと言われた2人は学校の校内を歩き回っていた。静かに足を進める悠の後ろ姿を見つめていた雪詠はあのさ、と話しを切り出す。
「ずっと聞きたかったんだけど、悠、それは一体いつまで続くの?」
「…それって何?」
「制服!!」
雪詠の言葉に悠はああと頷いた。悠は女と言う事実に関わらずまたもや男子制服を着ていた。
確かにそうなるだろうとは分かっていたまたか。またなのか。うちはいつになったら女子制服を着た悠を拝めるのだろうかと雪詠は思う。本音を言うとただ単に女子制服の制服を着た悠が見たいだけである。
そんな心境の雪詠に勘付いてか、悠はこのままだよ、と小さく零した。
「…ねぇ、悠、」
「――不思議、だよなあ」
「へ?…あ、…なにが?」
「ここだよ。調べても全然分かんねえっていうか…まるで全く違う場所にいるみたいだ。」
そう言いながらも悠はうんうんと唸っている。うちらのことは?と雪詠が尋ねてみたものの、悠は言いにくそうな表情をするだけだ。
「とりあえず、今の現状は今日学校見学に行った後に話すよ。今話したらそっちのことばっかり考えるだろうし」
「…分かった。」
悠の言葉に雪詠が小さく頷けば悠は小さく笑いながらも行こうかと雪詠の手を引く。
(……聞く前に遮られた。)
雪詠は前を歩きながらも行きたい場所ある?と尋ねる悠に屋上と答えた。
高いところがあまり得意では無いらしい悠はえぇ、と眉を顰めながらも渋々も頷いた。
4階までの階段を上がり、屋上への階段を探していればあれじゃないのと雪詠が視線で示す。その先に見つけた階段に、悠はそうだなと頷いた。
屋上へと続く階段は僅かに薄暗い。
他の空間とは違い、ひんやりと感じる空気を感じながらも階段へと足をかけたとき、その直後に何かの爆発音と悲鳴が響き渡った。
「な、何!?」
「分かんねえけど、なんかやばそうだな…。」
どうする?と悠が目線で雪詠に尋ねる。
悠の言葉に行くと間髪を容れず答えれば悠が待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
駆け足で階段を駆け上がり、悠がドアノブに手を伸ばしたとき、
「お前ら見たことねー顔だな」
『!!』
2人はハッとした顔で声の元へと視線を移した。
そこにいたのはスーツを着、黒のシルクハットを被った赤ん坊だった。
きゅっと雪詠がが悠の袖を引き、それを一瞬横目で見た悠が赤ん坊をしっかりと見据える。
その赤ん坊はちゃおちゃおと軽い挨拶を言うものの、絶対的な大きな違和感があった。
こんな小さい赤ん坊が二足歩行だということにも驚いたが、明らかに雰囲気が赤ん坊のソレではない。いや、それだけでは無い。この赤ん坊には、とてつも無い"何か"を感じる。
「赤ん坊、こんなとこでなにしてんだ?」
「お前らの気配を感じたからここに来ただけだぞ。」
また、違和感。
気配?お前のような赤ん坊が気配を感じ取れるとでもいうのか?そんなこと不可能だ。
「それよりお前ら、ここの生徒じゃねーだろ。」
「…俺達は明日ここに転入してくる転入生でな。」
「なるほどな。お前ら、名前は何て言うんだ?」
その言葉に悠は一瞬、言葉を詰まらせながらもハッキリと答えた。
「…氷室悠。」
悠は自分の後ろに隠れた雪詠に視線を向ける。
「榊、雪詠です。」
「俺はリボーンだ。」
赤ん坊がおもしろそーなやつらだなと内心ニヒルな笑みを浮かべていたことを、2人は知らない。
 
 
赤ん坊
(加速する物語)

 
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