第7話
待ち焦がれる
愛おしい君を
第7話
「ゆーしっ!」
「おわっ、急に出てきたらびっくりするやろー」
「今日も部活だったの?ねえ、またいろいろ聞かせて」
「しゃーないなー」
今日あったことを話し始める。まあ話すんはたいていテニス部の奴らのことやけどな
侑士から聞くのはテニス?とかいうスポーツについてが多い。あたしはここから動けないから侑士がテニスをしてる姿を見たことがない
「サクラにも俺のテニスしとるとこ見せたいわ。こう見えて結構上手いんやで」
「少しでも神社から出れれば見れるかもね、それに岳人くんや跡部くんたちにも会ってみたいな」
あたしが普通の人間だったらよかったのに。そしたら、もっと侑士のいろんな姿を見れるのにな
侑士から聞くことはどれも想像出来ない程興味深くておもしろい。
もっと外の世界を見てみたい
「そこでなんやけどまだ桜も残っとるし、ここでテニス部の奴ら呼んで花見しよ思うてんのやけど」
ええかな? 遠慮がちに聞いてくる侑士。きっと侑士はあたしが外に出れないから、気遣ってくれてるんだね
「本当?!どうしよう、すごく嬉しい」
「でも、あいつらにはサクラが…」
「ううん、いいの。あたしは見てるだけで十分だから。でも、さりげなく誰がどの人なのかくらいは知りたいかな」
そう言えば、優しく頭を撫でてくれる。だから、あたしはきっと貴方に依存してしまうんだ
侑士の行動のひとつひとつがあたしの中で暖かく広がっていく。ポカポカした気持ちになれる
「どんな服着ようかなー」
「え、その袴以外に服持ってるん?!」
「失礼ね、一応あるわよ。あたしだって女の子なんだから」
「せやな、てならなんで今まで着てなかったんや」
「だってこっちのが着慣れてるし、神社掃除したりするのに動きやすいし」
「んな理由かい!」
サクラらしいけどな。サクラが他の奴らに見えれば、俺らと同じ人間やったらよかったのに…
いろんな世界を見せたげたいんや。だから、今は俺がサクラの世界になってもええ?
<< >>