第8話
広げよう
私の世界を…
第8話
「すげー、桜めちゃくちゃ咲いてるじゃん!」
約束通り侑士たちが花見に来てくれた。シートをひいて、弁当が入っているであろう重箱を広げてる
自然と顔が緩むのを感じる。懐かしいな、昔はよくこうして多くの人がお花見に来てくれてた。今じゃもう考えられないけど…
「うわ、伊勢えび入ってるし!」
「宍戸さん、こっちにはキャビアが入ってますよ」
「たく、跡部らしいぜ」
ふわり、と風が吹き一緒に桜の花びらが舞う
「侑士…」
「な、なななな!」
「ん?どないしたんや岳人」
「ととと、隣!女の人が急に現れて…今もまだいる!!」
「何言ってんねん」
「いや、忍足……俺にも見えるぜ」
隣って…
「サクラが見えるってことか?」
「見たいだね。普通見えないはずなんだけど…」
そのとき桜の木々が囁くように風に揺れた
「そっか。ありがとう、あなたたちのおかげなのね」
目をつむり、風に身をまかせる
「あなたは幽霊なんですか」
「日吉!」
「侑士、仕方ないよ。んー、ちょっと違うかな」
薄い桃色の髪に、桜の若葉のような黄緑色の着物を着た彼女はそう言った。彼女がサクラ……
「皆さんには私の全てをお話しましょう」
桜の木々からの贈り物
――人間になりたい
少しでもその時があるのなら、精一杯楽しもう
「聞いてくれますか?」
全てを話せば、気味悪がるかもしれない。それでも、侑士は大丈夫って言ってくれた
侑士が優しく私の手を握る。微笑み、ゆっくり深く息を吸い込んだ。桜の花の香りがした
どう思われるか怖い。でも、侑士がいてくれるなら私は大丈夫
後悔しないように今は前に進もう
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