あの後、荷物も全部返してくれた。部屋はそのまま使っていいと言われたから、有り難く使わせてもらうことにした。平隊士の人に少し申し訳ないけど。




困ったのは山南さんがやたら未来に興味を持ったこと。携帯はどういう仕組みかとかね。研究者として興味あるんだろうけど、未来を知らない方がいいときっぱり断った。聞かれてもあたしは技術者じゃないから答えられないんだけど。




「四季、局長がお呼びだ」


「わかりました、わざわざありがとうございます」




掃除していた手をとめて、山崎さんにお礼を言って、立ち上がった。




「案内しよう。まだ、部屋がどこかわからないだろう」


「た、助かります…」




山崎さんに連れられて、中に入る。




「あれ、土方さん?」


「俺がいたら悪いのか」


「いえ、それより何かご用ですか?」


「ああ、その格好は少々目立つだろう。
だから、これで何か着る物でも買ってきなさい」




渡されたのは巾着袋。ずっしりした重みが手に伝わる。




「でも、」


「屯所内に女がいると他の隊士にばれても面倒なんだよ。
だから、男装してもらう」


「女の子なのにすまないね」


「いえ、それは全然嬉しいんでいいんですけどー」


「金なら気にしなくていい。それに着る物も違っていたみたいだから、いずれ必要だろう」


「なにからなにまですみません…。
ありがとうございます」


「遠慮しなくていい。トシ、彼女を頼む」


「あんたって人は本当お人よしだな。ほら、行くぞ」




あたしは近藤さんに深々と頭をさげて、土方さんと屯所を出た。




「うわぁ!」


「そんなに市中がめずらしいか?」


「はい!詳しくは話せませんけど、初めてです」


「変わったやつだな」


「あ、土方さん!あれなんですか?!」




着物の袖を引っ張り、指指す。
答えては質問されの繰り返し。
店につくまでに相当疲れた感じがした。




「悪いがこいつに合う着物と袴を見立ててくれ。男物でな」


「いらっしゃい、土方さん。あら、異国の子かしら」


「日本人なのですが、しばらく異国に行っていたもので」




めんどくさいので、適当に話しを作った。




「そうでしたか、では奥へ」


「頼んだ」




なにか訳ありとわかったのか女将さんは、何も追求しなかった。あたしは奥の部屋へ連れて行かれた。




それからはあれやこれやと着させられ、気がつけば着せ替え人形状態。
ついでに、着物や袴の着方も教わった。




「終わりましたよ、おいでなさい」




ふらふらした足どりで土方さんのとこに戻る。
上は若草色、下は紺の袴。
胸は晒しを巻いて平らにした。




「男の子には見えませんか?」


「いや、大丈夫だろう」




履物や必要な物を買って、会計を済ませると店を後にした。




「なんか落ち着かないなー。
歩きにくいし」


「慣れてないからだろ。
時期に慣れる」


「土方さん、ありがとうございました」


「構わねえよ」


「これもですけど、殺さないでくれてありがとうございました」




一瞬目を見開いたけど、細めてふっと笑った。




「俺もあまいってことだな…」


「今なんて…」


「さあな」


「ぶー、意地悪ですね。
てか胸がきつい」


「こら、んなこと街中で言うんじゃねぇ!」


「土方さん、顔真っ赤だー」




そのまま屯所まで走りだす。




「こら、待ちやがれ!」




あたしは笑いながら屯所まで走った。




「近藤さん、ただいまです!
ありがとうございました!
どうですか、似合います?」




その後、屯所にはあたしたちの賑やかな笑い声が広がった。






10.05.22


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