「ほんっとすみません!
きたくなかったとかじゃなくて、いや、できれば来たくなかったけど……。じゃなくて!
沖田さんと格闘してて土方さんに呼ばれてるの知ったのさっきだったんです。
あの、罰なら受けるんで追い出さないでぇぇぇ!
お願いします!!」
畳に額を擦りつけ、深々と謝る。沈黙が恐い。てか重圧感が。
「ちっ、総司のやつ。おい、顔あげろ。総司のせいなら、てめぇが謝る必要ねぇだろ。話しは別件だ」
顔をあげれば、目をしっかり見据える。
「お前は本当に未来から来たのか。洗いざらい話せ。いつまでも、お前を置いといてやるほど俺たちは優しくねぇ」
「ならどうしたら信じてくれますか?
ここに居させてくれますか?」
「未来を話せ」
「そ、れは、できません。
あたしがここにいること自体本当はいけないんです。あたしが存在するだけで歴史を変えてしまうかもしれない。
ここにいる人たちだけじゃなくて、未来の人たちの将来まで変えてしまうかもしれない。
だから、お話できません!!」
嗚呼、これでもうなにもかも終わるのかな?
わけのわからないのをずっと置いとくわけにはいかない。
まして、話さないとなれば用済み。殺されるんだ、あたし。
スカートを握りしめて、口を結ぶ。震えてるのがばれないように、握る手に力を入れた。
「殺されても文句ねぇな」
「……はい」
やっぱり。涙が溢れそうになるのを堪えて、声を絞り出す。
「トシっ!!」
びっくりして開いた襖の方を見れば幹部全員が勢揃いしてた。
「近藤さん、…お前らも全員聞いてたのか」
「女の子を殺すなど許さんぞ!
まして彼女はなにもしていないではないか!!」
「近藤さん、いいんです。
此処はあたしの世界じゃない。
あたしがこの世界を狂わせちゃいけない。狂わせてしまうくらいなら、早く消えたほうがいい」
頬に涙が伝う。大丈夫、あたしはまだ笑える。
「今日までお世話になりました」
頭をさげる。だめだ、涙がとまらない。
「馬鹿野郎!なんで簡単にんなこと言うんだよ」
「うわあああん、ざのに゙いぃいい!!」
佐之兄や平助、永倉さんが寄ってくる。
「土方くん、彼女の持ち物を調べましたが今の私たちの時代にはない物ばかりでした」
「つまり、この子は嘘をついていないってことですか」
「副長、これを」
斎藤さんが持ってきたのは、此処にきたときあたしが持っていたリュック。
中から勉強道具やジャージなどを取り出す。
あたしは携帯に手を伸ばす。
手慣れた手つきでボタンを押す。
カシャッ!
あたしが撮ったのは土方さんの写メ。
そのままそれをみんなに突き出せば、かなり驚いてた。
「ずびっ…未来にはこういう物が当たり前に出回ってて、誰もが持ってます。
これ証拠になりませんかね?」
「驚きました、私がお手上げだった物がいとも簡単に操作されるとは……」
「土方さん、いいんじゃないですか。
僕はこの子が嘘言ってるなんて思えませんけど」
永倉さんが大丈夫だ、と背中を叩いてくれた。強すぎて、背中が痛む。平助は前であたしを庇うようにして座ってた。
「はぁ、わかったよ。
大体お前ら勘違いしてるぞ、はなから殺す気はねぇ。会津あたりに面倒見させようかとは思ったがな」
「なんだ、なら始めからそう言って下さいよ」
「聡美ちゃん、よかったな」
「はいっ!あの、ありがとうございます!!」
「そのかわり、雑務をしてもらうからな。
働かざるもの喰うべからずだ」
「あ、ありがとうございます!!みんなありがどおお」泣
紙一重で繋がった命。みんなの優しさが嬉しかった。
涙がとまったのは、それからしばらくしてからだった。
01.05.15
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