捕虜生活だから牢屋にでも入れられるかと思えば、普通の部屋を用意してくれた。
「あの、部屋使ってもいいんですか?てっきり牢屋あたりかと思ったんですけど」
襖を開ければ、壁に寄り掛かるように原田佐之助がいた。
「ここに通したのは土方さんだ。鬼の副長も本当は優しい、てことだね」
まるで千鶴と同じ。暫くは監視つき、て行ってたし。
「夜空きれいですね」
ふと、空を見上げるとたくさんの星が浮かんでる。原田さんの隣に腰を下ろす。
「こんな星空始めて」
「向こうの世界では見れないのか?」
「周りが明るすぎて、星の光が負けちゃうんですよ。だから、こんなにたくさんの星を見るのは始めてです」
そう言えば驚いたみたいだった。
「そうか」
「……信じてくれるんですか?」
「さあな。ただ、嘘つく奴はあんな真っすぐな眼できない、と思っただけだ」
俺はそう言って頭を撫でた。ありがとう、と小さな声が聞こえた。
「我慢しなくていいんだぜ」
「っ!」
肩を引き寄せてやれば、腕の中で泣きだした。
「こ、わい…やだよっ……しに、たくない!」
「なんにもわからないのは……しらないのは、こわいよっ!」
ああ、こいつは本当に別の場所から来たんだ。泣き叫ぶ姿にそう思った。
「大丈夫だ。俺が守るから……」
「ふぇ……っく、うぅー」
「聡美は死なせないから」
驚いた顔して見上げる聡美。涙で顔がぐちゃぐちゃ。腕に力を入れて抱きしめれば、涙がまた頬を伝った。
「あ、りがとっ…」
どうしてあんな言葉が出たかはわからない。気付けばそう言ってた。
女の涙には弱い。これじゃ新八みてぇだな。
気付けばそのまま寝てた。部屋の中に入って、布団を敷いて寝かせてやると平助と新八が襖の外から顔だした。
「こいつは嘘言ってねぇよ」
「信じらんないけど、今の見たらなー」
「女の子がひとり知らないとことは、つらいよな。というか佐之、お前途中くどくなよ」
「そういうつもりはねぇよ。ぽろ、と出ちまったんだよ」
「たく、本当新八っつぁんも佐之さんも女の子に弱いんだから」
「んぅー……すぅ」
びくっとして声のしたほうに振り向く。一筋の涙が頬を滑り落ちた。
「今はゆっくり休めよ。
おやすみ」
涙を拭ってやり、そっと部屋を出た。
どうか今はいい夢を。柄にもなく、そう思った。
10.05.09
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