すみません、あたしは物じゃないんですけど……。 盤戸高校からの帰り道。 電車に乗ればばみんな疲れたみたいで寝てる。 あたしも水町くんの隣でうとうとしてたら、腕をつつかれた。 「どしたの?」 「さっき俺が言ったこと覚えてる?」 「うん、でもなんで?」 「ンハッ、俺からの筧へのプレゼント!」 あたしを使うな、あたしを。 プレゼントって普通自分が何かすることが前提だよね。 筧くんを見れば、寝てるみたいでこくこく舟こいでる。 「なあ、なずなはこっちにきてどんな感じ?」 「んー、びっくりしたし、不安だったけど、今は楽しいよ。 みんながいてくれるし」 そう言って笑えば水町くんも笑った。 「なずながプレゼントなのは、なんとなく!」 「おい、さっきのいい雰囲気返せ」 ふたりして笑えば、筧くんが起きた。伸びをひとつ。 本当大きいよね。 てか水町くんと筧くんの巨人に挟まれてるあたして、周りから見たら小人だね。 「ごめん、起こしちゃった?」 「いや、大丈夫。 なに話してたんだ?」 「筧にはひみつー。 な、なずな!」 秘密にされたのが気にくわないのか、筧くんが少し不機嫌になるのがわかった。 身体は大きくても、中身はあたしたちと一緒なんだと思うと嬉しくなった。 「筧くん、かわいー」 「なずなさんは、またそう言うこという…」 「拗ねないの、ほら駅着いたよ。じゃ、みんなお疲れ!」 「おう!」 筧くんの手をひき、ホームに降りればそのまま手を繋いで歩きだした。 「なずなさん、あの!」 「実はね、水町くんが筧くんにあたしをプレゼントしたいんだって。意味わかんないよね。 で、一応考えたけどあたしなにしたらいいかわからなくて…。 だから、これで我慢してくれる?」 「ったく、あいつは……」 呆れたのかため息をつく筧くん。うん、誰だってそういう反応するよね。あたしも呆れたし。 「え、筧くん」 「プレゼントなら有り難くもらう!」 顔を赤くした筧くんが手を握り返す。嬉しいならそういえばいいのに、素直じゃないなー。 「ねえ、筧くん」 「なに?」 「耳まで真っ赤だよ」 「っ!」 繋いだ手をしっかり握り、月明かりの中帰路を歩いた。 11.01.06 ▼ |