ぶつかり合う音が妙に新鮮だった 「Set!Hat!」 後半が幕を開けた。ボールは盤戸。赤羽が巨深のラインを抜けた。 「筧くん…」 筧くんが赤羽をとめた。しかし、もうキックゾーン内。コータローのキックで3点が盤戸に追加された。 「スマートだぜ!見たか、俺たちキックチームを」 コータローが髪をセットしながら言ってる。 「なずな?どした、具合悪いの?」 「いや、前半も見てたけどすごく綺麗なキックだと思って」 「でしょ。これがキックチーム盤戸スパイダーズよ!」 少しジュリが羨ましかった。チームを誇らしげに自慢できて。あたしはどうだろう? マネージャーだって始めたばかりで、アメフトのルールは向こうの世界で漫画読んでたからなんとなく。 「ジュリ、あたしがマネやってていいのかな?」 「グランド見てみて」 「とめろ、水町!」 「ンハッ、わかってるって!」 ズシャー 「よし、ここから反撃だ!」 「あたし達は選手じゃないからフィールドには入れないよ。でも気持ちは繋がってるから。同じフィールドで一緒に戦ってるんだよ」 笛の音が聞こえる。タッチダウンで巨深が逆転する。 「それにアメフト以外でのサポートはあたし達の仕事。寧ろ任せられないわ」 「そうかも。ありがと、ジュリ。元気でた」 「よかったー。そんなに考えなくていいんだから、もうちょっと肩の力抜きなよね」 「うん、自分のやれることを精一杯やるよ」 「その意気だよ!頑張れ、なずな」 ピー 試合終了の笛の音がフィールドに鳴り響いた。 結果は52-50でポセイドンの勝利。 「ちくしょー!キック一本決めれりゃ逆転だったのによ!!」 「お疲れさま、惜しかったじゃない」 「コータロー、俺たちはこれからだ」 「ああ、そうだな!」 「お疲れさまー、タオルとドリンクどうぞ」 「なずなさん」 「筧くん、お疲れ」 「俺の言った通りになっただろ」 「約束ちゃんと守ってくれたんだね」 ありがとう、と俺にだけ向けられた笑顔。試合の疲れも吹っ飛んでいく気がする。 「それにみんなすごくかっこよかったよ!」 その気持ちが俺にだけ向けられるようになるのはまだ大分先の話。 ▼ |