(佐久間視点)
テストの結果が張り出されたらしい。見に行くと鬼道がそこにいるのが見えたので声をかけた。
「鬼道」
「ああ、佐久間か」
結果を見ると、鬼道が1位だった。鬼道が高校で帝国に帰ってきたんだなと改めて思った。
「お前がいない時はずっと不動が1位だったんだ」
まぁこれは中学時代の話ではあるが、きっとこれから鬼道と不動の競り合いになるのだろう、現に不動は2位だった。それも点差は僅かなものだ。
「チッ」
後ろから舌打ちの音が聞こえたと思い振り向けばそこには不動がいた。
「あーあ、今回は1位を譲ってやったが次は引きずり下ろしてやるよ、鬼道クン」
「ふっ、そう簡単には譲らないさ」
中学の頃と比べたら本当にコイツらはいい関係になったと思う。特に不動が丸くなった。仲良い女子を作るくらいには。あれは正直意外だった。
「というか不動、お前」
「あん?」
純粋な疑問が頭をよぎる。不動に声をかけると不動はこちらを見た。
「お前の学力的にあの子…名字に毎回ノート借りる必要なくないか」
「予習なんてめんどくせーことやってられっかよ、定期テストレベルならあいつのノートと授業でなんとかなるっつの」
要は予習がめんどくさい、そういうことなのか。
でも不動が人と関わって楽をすること自体が珍しい。
「まぁ名字も優秀なようだしな」
スッと鬼道が指指した先は名字の名前。そういえば鬼道は同じクラスだったな。テスト前に名字に会ったときのことを思い出す。
「…賢いな」
意外だった。なんというかどこか抜けていそうな印象を持った彼女だけれども、意外としっかりしているようだ。
「アホそうな顔してんのにな」
滅茶苦茶失礼な言葉を発した不動の顔は妙に優しげで、なんというか、名字と不動の関係がより疑問に思えるのだった。
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