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「席替えをする」

担任があっけらかんと、少し気だるげに言った。

席替えも担任同様、あっけらかんと行われた。

クラスメイトは不満やら喜びやら色んな感情を示していた。それでもいつも通り平常の皆だった。

動揺と混乱で気が狂いそうなのは私1人かもしれない。というか私の経験談では席替えは一大イベントなはずなんだけれどもこの皆の平然具合を見るとそういう訳では無いのだろうか。私立の金持ち故なのだろうか。気品があるのだろうか。

いや、そんなことはこの際関係ないのだ。

「名字か、よろしくな」

ドクンと心臓の跳ね上がる音が身体の中で鳴り響く。非常にうるさい。

「よろしく、鬼道くん」

ちゃんと笑えてることを祈るしかない。後ろをチラリと振り返ると私より大分後ろの席を勝ち取った友人がニヤニヤとこちらを見ているのがバチりと確認できた。ああっ、これはもういじられる未来が垣間見える。



「おもしれー席じゃん」

いつもの時間、古典のノートを取りに来た不動くんが言った。席替えしたけどすぐに私を見つけたようで私の席まで来てそこで隣の鬼道くんに気づいたようだ。

「なんだ、不動か。どうかしたのか」

それに気づいた鬼道くんが不動くんに声をかける。この二人、意外と仲がいいようで。

「あー、こいつに用なの」

「ん、これ」

「サンキュ」

ポンポンと頭を叩く不動くんにやめてくれの意を込めてノートを渡す。まあきっとその意は伝わってないけど。それを見ていた鬼道くんが不思議そうな顔をした。

「なんだそれは?」

手渡したノートが気になったらしい。古典のノートだよ、と言うと合点のいったような顔をした。

「名字の所にお前がよく行っていたのは古典のノートを借りるためだったのか、毎度毎度」

少し呆れた口調の鬼道くんはそう言ってまた何か言おうとしたけれど不動くんはそれを遮って「説教はごめんだぜ、鬼道ちゃん」と言ってさっさと去ってしまった。

「名字も、そんな世話を焼く必要はないぞ」

鬼道くんは不動くんの保護者ですかとても可愛いかよ。口に出しそうになった。危ない。

「だね。でも私もその分色々お世話になってるから」

笑ってそういえば鬼道くんは少し意外そうな顔をした。なんか変なこと言っただろうか。思考をかけ巡らせているうちに鬼道くんは控えめに笑った。

「仲良いんだな」

仲良い、のかな。よくわからないけれど。

「鬼道くんとも仲良くなりたいな」

そうやって笑って見せれば鬼道くんは「よろしく頼む」と言ってくれた。




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