テストが近づいていた。私が帝国学園に入って初めての定期テストとなる。ちょっと不安。
先生達は授業受けて真面目に予習復習してたら大丈夫だとは言っていたけど、「基本的に中等部と同じような感じだ」って説明としてずるくないか。内部進学多いからと言ってその説明はどうなんだろうか。市立中学と帝国の中等部のテストが同じレベルな訳がないだろ!って不動くんに愚痴ってみたら「勉強したら出来る」って言われてしまって黙るしかなかった。冷たい。
テスト前は部活は禁止になるようで、放課後の図書室の人数が増えていて驚いた。流石進学校。もう少し遅ければいつもの特等席に座れないところだった。危ない。しばらくは帰りに鬼道くん探しても会える可能性はほぼゼロになっちゃうのか、残念。嘆きの言葉を脳内でつらつらと綴りながら図書室を出ようと扉に手をかけた。ら、誰かの手と重なってしまい、急いで意識を目の前に戻すとそこには鬼道くんがいた。
「ああ、すまない」
鬼道くんが手を引いたので急いで私も謝ろうとしたけれど、ここはまだ図書室だ。煩くするのは不味いと思い鬼道くんの優しさに甘えて先に図書室を出た。
「ごめんね、ありがとう」
2人ともが図書室をでタイミングで礼をいえば鬼道くんもああ、とだけ返してくれた。正直心臓がバクバクでもうなんのこっちゃわからないけれど、鬼道くんの格好よさだけはこの至近距離でより身を以て感じている。
「名字も図書室で勉強していたのか?」
「うん、日課でね」
あなたの帰りに鉢合わせないかという不純な理由で日課になりましたとは言えず。言えるわけがない。
「意外だな、日課ということは部活は入っていないのか」
「入りそびれちゃって」
自然と二人並んで正門へと歩いていた。私今、鬼道くんの横にいる!まるで夢なんじゃないかと思うけど、ちゃんと起きてる、夢じゃない。たわいない話をしているとすぐに正門へと着いてしまった。儚い時間だった。
「鬼道」
正門に出てすぐに鬼道くんに話しかける人がいた。いつぞや不動くんのノートを持ってきてくれた眼帯の子だった。
「あ、あの時の」
眼帯くんが私に気づいたようで少し驚いたような顔をした。それを見た鬼道くんが少し不思議そうな表情を見せた。
「知り合いか?」
「この前この子不動探しててうちのクラスの前で困ってたから話しかけたんだ」
「あの時はありがとうございました、えっと、」
「佐久間次郎、よろしく。」
「名字名前です、よろしく」
眼帯の子は佐久間くんというらしい。またひとつ、知り合いが増えたことが嬉しい。喜んだのもつかの間、佐久間くんがここにいる意味を思い出す。
「佐久間くん鬼道くんに用があったんだよね。私は、お暇するね!」
邪魔をするわけにはいかない。またね、と鬼道くんと佐久間くんに告げて、帰り道を辿る。鬼道くんと佐久間くんがまたなと言ってくれたのが嬉しかった。会えないと思っていただけに鬼道くんと話せたことが異様に嬉しくて帰り道の足取りは軽かった。
その日は嬉しくて不動くんにうざったいくらいのハイテンションでRINEを送ってしまったけれど、不動くんはウザそうにしながらもちゃんと話を聞いてくれた。不動くんは恋する乙女の味方なのかもしれない。
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