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部活終わりの時間に、昇降口で待ってること。そんな約束をしたわけで私は放課後いつものように図書室へ向かう。今日も今日とて予習、たまに復習…。当然ながら授業のスピードも凄まじい、さすが帝国。

「…っと、こんなもんかな」

ひと息ついて、外を見るとまだ雨は降っている。さっきと違うのはだいぶ暗くなっていること、そろそろ部活も終わる時間だと時計をみて気がつく。

そろそろ、昇降口へ向かおうかな。そう思って片付けはじめると同時にとんでもない緊張が。うぅ、憧れの鬼道くんと一緒に帰れる日が来るなんて!心臓がバクバクするのを抑え(抑えきれてないけど)、昇降口へ向かう。

いやぁ、どうしよう。緊張する!緊張するけど、傘持ってくるの忘れた私はナイス!
パニックで頭がおかしくなりそう、なんて思っていれば昇降口には既に鬼道くんがいた。

「あ!ごめん!待ったよね」

「いや、気にするな。こんな天気だからな。少し早く終わったんだ。」

「そっかあ、待たせちゃってごめんね」

「いや。じゃあ、帰るか」

そう言って鬼道くんが下駄箱で靴を履き替える。それに続いて私も履き替える。ローファー、雨でダメになっちゃうかもなぁ。なんて考えつつも靴を持つ手は若干震える、緊張。鬼道くんと一緒にいてここまで緊張するの、初めて話した時ぶりな気がする。なんだこれ、夢?

靴を履き替えて鬼道くんの横に駆け寄る。うわ、こんなの、彼女みたい。

「名字はこっちを使え。濡れると困るだろう」

そう言って鬼道くんは私に長傘を差し出す。そして自分の手には折りたたみ傘。

「えっ、悪いよ、私が借りる立場だし…」

「俺はいい、名字が濡れる方が困る」

なんとか折りたたみ傘を、と思って粘ろうとしたけれど、鬼道くんには勝てなかった。おずおずと長傘を受けとる。こんな所まで気が利くの流石すぎるんではなかろうか。ああ、もう、どこまで格好いいんだこの人は!

「名字の家はどっちの方向だ?」

「えっとねぇ、こっちだよ」

指さした方向に2人で歩き出す。何話そうかなと頭を巡らせていると鬼道くんが先に口を開いた。

「名字は不思議な奴だな」

「えっ、そうかな」

「不動があんまりサッカー部のやつ以外と話しているところを見なくてな。よっぽど変わったやつかと思ったが、話してみると普通の高校生だ」

いきなりの不思議ちゃん発言かと思ったけれど、そうか、不動くんか。そういえば、一番最初に話しかけられた時も不動くんが関係してたな。なんだかんだ仲良いんだろうな。

「たまたまなんだよね、実は」

「たまたま…?」

「1回不動くんとぶつかっちゃってさ、その時にノート取り違えちゃってそこからなんだよね。なんで不動くんが構ってくれてるのかはわかんないけど」

笑って鬼道くんの方をちらりと見てみれば、鬼道くんもふんわり微笑んでる気がした。鬼道くんと不動くんはいい友達なんだな、きっと。



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