声をかけられて、思わず肩が跳ねる。

目を向けると、そこには桃色の髪の女の子…サクラが心配そうにこちらを伺っていた。

「やっぱりユズじゃない!どうしてこんなとこに座ってるのよ」

ほっとして強ばっていた体の力を抜く。小さくため息が漏れた。よし、大丈夫。

ほら、と手を差しのべてくれたサクラに曖昧な返事をしながら、有り難く手を借りて立ち上がる。
路地を出て明るい道路に入ると、明暗の差に目がチカチカした。

「ってアンタ、顔色悪いわよ?ちょっと来なさい!カカシせんせー!」

ちょっとまってー!なんて声を張り上げるサクラの視線の先には見慣れた後ろ姿が三つ。
まってそういえばなんでいるんだ第七班!波の国はどうした!いつ帰ってきた!!

「ん?どうしたサクラ」

「なんかあったんだってば?」

振り向いて立ち止まっている三人に、サクラが小走りで駆け寄る。
…もちろん私の手首をつかんだまま。

うわっちょっと、と思いながら、半ば引きずられる形で追いつくと、ナルトが指を指して叫んだ。

「あー!お前ってば!……誰だっけ?」

「バカナルト!クラスメイトの名前くらい覚えときなさいよ!ユズよユズ!」

「ウスラトンカチが…」

私の手首を離したサクラの手が、ナルトの頭に拳骨になって落ちた。
サスケは腕を組んだままため息をつく。

君も私の名前知らないだろうに…と思ってサスケをチラ見すると、キッと音がしそうな程鋭い目つきを頂いた。
ごめんなさい私ドMでもツンデレ萌えもしないんでそういうの結構です。すんません。


そのままナルトがサスケに突っかかり、ギャーギャー喚く三人を元気だなあと遠目で眺めていると、肩にポンと手が置かれた。

喉が引きつったような声を必死で飲み込んで、咄嗟に二、三歩の距離をとる。忍具が入っているポーチに手をかけたまま向き直った。

カカシさんの手が宙に浮いたまま固まっていた。
盛大にやらかしてしまった。これじゃあ動揺してますって言っているようなものだ。

「……カカシ、さん」

ふっと息をついて近づくと、カカシさんは険しい顔をしていた。
…なかったことには出来ないよなあ

「ユズ」

「はい」

「何があった?」

「えっ、とー、さっきのお客さんで変な人がいたのでそれでちょっと」

はは、と我ながら乾いた笑いで誤魔化すと、カカシさんは納得していないような顔で、そ、と言った。

「ま、なんかあったら言いなさいね」

「大丈夫ですよ。ありがとうございます」

軽く笑うと、カカシさんがため息をついた。
明らかに大丈夫じゃないのは自分でも分かってるので、そんな呆れた顔をしないで欲しい。

「なあなあサクラちゃん。あの二人、コソコソしててなーんか怪しいってばよ」

いつの間に一段落着いたのか、ナルトがこちらを見ながらサクラに耳打ちをしていた。ばっちり聞こえてますよナルトくん!耳打ちの意味わかってますか!!

思わずそちらに目を向けると、目が合ったサクラがこちらにツカツカと歩いてきて、そのまま私の腕を掴んだ。

「ユズ、アンタが大人びてるのはアカデミーのときから知っていたわ。でも、でもね。カカシ先生だけはやめておきなさい!」

「えっ?ちが」

「えー!やっぱりそういう関係だったんだってば!?カカシ先生はねぇってばよ…」

「違うって」

「チッ…前々から信用ならないとは思っていたが、ここまでとはな。カカシ」

こういう時だけチームワーク発揮すんなよ第七班!中忍試験前ってギスギスしてませんでしたっけ!?



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