ベッドの上の生活も5日目ともなればだいぶ慣れてくるもので、まあ、なんというか、端的にいうと暇である。めちゃくちゃに、暇だ。
目が覚めて最初の2日間は寝ていればよかった。まあ、初日の夜は寝ているどころではなかったけれど。
寝落ちして起きたら昼だったし、当たり前だがハヤテさんの姿はなかった。熱を持った身体も休息を欲してたようで、その後もかなりの時間を眠って過ごした、はずだ。正直朦朧としていてよく覚えていない。 日中トイレに行こうと起きて崩れ落ちたことだけは何となく覚えてるけれど。
3日目、体調が安定したのを見計らってか、サクラたちがお見舞いに来た。正確にはサクラと猪鹿蝶、キバとヒナタの2組である。揃いも揃って無茶するなと怒って、無事でよかったと微笑んだ。
サクラといのには身体に傷がついちゃったわねと嘆かれて、チョウジは痩せちゃったねと眉を下げた。シカマルは終始眉間に皺を寄せていたが、めんどくせーとは言わなかった。
キバは俺も起こせよと悔しんでいたし、ヒナタは終始泣きそうな顔でこちらを伺っていた。
あやまったり言い訳をしたり、焼肉に行く約束をしたり。色々話もできて、悪くは無い時間だった、と思う。
分かったのは、砂隠れが利用されてたこと、3代目が亡くなったこと、以上。
私に関しては、みんなもよく分かっていないらしい。早く逃げなさいよとか、無茶したからだとか、心配を滲ませる言葉だけだ。避難をミスって運悪く敵に遭遇しただけと捉えられている気がする。曖昧に頷いて、流して、大丈夫だよと笑った。が、心中は大荒れであった。病み上がりに嘘とかつかせないで欲しい。
上忍……カカシさんとかなら、カブトと接触したことを知っているのだろうか。それとも、誰も知らないことなのか。よくわからない。
で、今、五日目。まだ点滴が外れない。そろそろ寝飽きたので病院内をうろついたりしたいけれど、ベッドから降りれるのはトイレだけだ。なんてことだ。個室なのが仇になっているとしか思えない。本やゲーム、あとはケータイでもあれば潰せる暇も、手元に何も無ければぼーっとするしかない。せめて紙とペンでもくれれば………と思ったが、札を作ったりしかねないからダメだそうだ。バレている。
特に、何かをしたい訳でもない。それでも、気になるのだ。私にカブトが接触してきて、なにかが変わるのか。サスケはどうなっているのか。どこまで把握されているのか。いつのまにか入院着を着ていたので服もポーチも無いし、ついでにここの入院費用とかも気になる。
……あとは、私がなぜ生きているのか、とか。
そもそも、助かるはずがなかったのだ。相手は正真正銘の忍者で、下忍にもなれない落ちこぼれではなかった。確かに私はあのとき死ぬ気だったし、それ以外の選択肢はないと思った。別に死にたかった訳では無いけれど。ハヤテさんがあそこまで心配してくれるなんて、思ってもいなかったし。
暇なのはよろしくない。考えることくらいしかやることがないのに、情報が足りなすぎる。無駄だとはわかっていても、悶々と考え込んでしまう。
身動きが取れないまま、点滴が落ちるのを見守っていると、ドアが静かに開いた。
「お、起きてたか」
「………アスマさん?」
予想外の人が来た。いつものタバコは病院だからかくわえておらず、代わりに資料を少しとブランケットを持っている。状況説明でもしてくれるのだろうか。
それにしても、どうしてこの人なんだろう。そんな思いが顔にでていたのか、パイプ椅子に腰掛けたアスマさんは口角をつりあげた。
「俺じゃあ不服か?」
「いや……そういう訳では…… 」
「はは、冗談だよ。こんなとこじゃ気が滅入るだろ。外に出ないか?」
「あー……ベッドから動くなって言われてまして…」
「許可なら取ってきたよ」
動けるか?そう聞かれて、一も二もなく頷いた。嫌気がさしていた私にとってはとてもありがたいお話だ。たぶんこの人、煙草が吸いたいだけな気もするけど。