開店したら担当上忍さんが口コミで広げてくれるらしいので、まずは店を作ることにした。


自分で店を持ってみたいと思ったことは、確かにある。そこまで大層な夢でなく、憧れのようなものだったけど。
まあ、この世界で忍者やっても年金もらえるわけでもあるまいし。むしろ任務行くより危険性が低いから万々歳かもしれない。

でも問題は、先立つものである。端的に言うとお金だけ。マネー。
自分の家を店にするにも古ぼけている上に辺境だ。無理。そして新しく何かを買うなんて論外である。

つまり、店を持つことは却下。今の目標は、とりあえず自分の食いぶちを自分で稼ぐことなのだ。
仕方がないので行商まがいな事をすることに決定。
作った札を歩いて売る。なんてプライスレス。

気づかれないと困るので、取り上げられた額当ての代わりにと、額に赤い布を巻いた。目印にはなりそう。ほかは普段着という名の大きめの古着だが、まあ、赤が目立てば良い。


担当上忍に私の情報を流してくださいと頼み、サンプルとして結界札と無駄に威力がある起爆札。水、火の札を数枚渡しておく。
担当上忍の分も格安で売った。

扱いにはく れ ぐ れ も 気をつけてくださいと言い含めておいたから、大丈夫だとは思う。
水や火の札は特に気をつけてほしいところだ。アレ敵味方関係ないから……



元担当上忍に口コミ依頼をした次の日、赤い鉢巻をつけて街を歩いてみる。
商店街とか、人の集まる場所を中心に歩いていると、初任務を終えたらしい10班メンバーと遭遇した。

シカマルと目が合ったので軽く手を振る。

「おー、みんな受かったんだね」

「そーいうお前は落ちたんだな」

「…シカマルくん、オブラートって知ってる?」

額当てしてないからバレるだろうけど。仕方ないんだけど!

「ユズはこれからどうするの?またアカデミー?」
チョウジがポテチを差し出してきたので有り難く受け取っておく。食べながら首を横にふった。

「っていうかあんたなんでそんな格好してんのよ。アカデミーではそんな派手なのつけてなかったじゃない。」

「おお……」

いのが私の名前を覚えてたことに驚いた。喋ったのって片手に数えるくらいじゃないかな?

答えなさいよ とでも言いたげな視線を受けて、口の中のお菓子を飲み込んでから言った。

「私、今行商まがいなことしてて…」

とても説明しにくい。
悩んでるとアスマ先生と目が合ったので、そのまま向き合う。

「もしかして、お前が札屋か?」

「おお…ご存知でしたか」

今度は同期組の頭にはてなが浮かぶ。
んーめんどくさい。どうやって説明すればいいのこれ

「話は聞いた…というか見た。昨日、上忍待機所でちょっとした事件になったんだぞ」

「なにがあったんですか…気をつけてって言ったのに…」

思わずため息をつく。そして同期組の頭にさらに増えるはてな。
これ説明しなきゃだめよねー
面倒だけど顧客ゲットのためにも!
同期組に向き直る。

「どうも。札屋のユズです。どうぞご贔屓に。」

深々と礼をして自己紹介。
3人は 札屋? と首を傾げてる。
シカマルの困惑した顔はレアなのでちょっと面白い


百聞は一見に如かずと、場所を少し移動して、人気のない水場で威力低めの火の札を出す。ちょっと離れてもらい、軽くチャクラを流し込む。
かとーん ごーかきゅーの術ー。なーんて。
下忍サスケくらいの炎がボウッと燃え上がる。

アスマ先生はおーって顔してて、同級3人は唖然。
仕組みが気になるようだけど私だって知らない。札に単語書いてチャクラを流すとできますよ。


質問責めにされそうになったので、軽く宣伝して逃走しました。



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