班員同じくモブ顔の上忍師と顔合わせも済んで、早速連れてこられた演習場。
出された課題は「五分間の鬼ごっこ」だった。鬼は先生。トラップ忍具攻撃なんでもあり。頭をタッチされなければいいという簡単ルール。
鈴取りのような鬼畜課題じゃないし、協力すれば五分間くらい……受かる気もするんだけどなあ……と思った途端、

同じ班の二人が開始と同時に目を合わせ、そのまま突っ込んでいって一撃ノックアウトされた。おい、話を聞け。鬼ごっこだぞ。上忍と戦えるとウキウキしてたのはわかるけど空気を読もう。なんで鬼に突っ込むかなーもーー!!

私と二人を勢いで伸しちゃった上忍師と目があった。あちゃー、という顔をしたのを見て、思った。
なるほど、こういうパターンか。

まあとりあえず形式上戦わないと…というか、逃げないといけないらしい。くそやろうチーム分け意味ないじゃないか。個人戦もいいとこだ。
忍術なんて学校で習ったのくらいしか知らない(というか教えてくれる人がいない)私は、基礎忍術と、器用貧乏な忍具で逃げるしかない。
しかもお金もないのでまともな忍具でもないという謎のハンデを背負ったままである。所詮世の中金だちきしょう!!

逃げて変わり身使って唐辛子粉末入り煙玉で目くらましして逃げてトラップ仕掛けてまたもや起爆札で爆発起こしてエンドレス。それでも上忍師は怯まずに追いかけてくる。まじ怖いよー人間じゃないよー
起爆札つくるの大変なんだぞー!
しかも、たった今軽々避けた起爆札、改良に改良を重ねた特別製である。心が折れる。

ここまできたら、もう意地だ。

ノリだけで作った結界札を周りに散らして、上忍師を閉じ込めてから起爆札を大量に爆発させる。チャクラを流すと透明な壁が出来る優れものである。わりと脆いが、貧弱な私は爆風でも吹っ飛びかねない。
どん、と地響きが聞こえ煙が晴れると、現れたのは土の壁であった。うわー土遁とかずるい!私まだ下忍にもなってないのに。ノーマルタイプの忍術しか使えないのに!

奥の手とばかりにポーチから出した大量の札を上忍師に投げつけ発動させると、札が全て炎になって上忍師に襲いかかる。が、水遁で相殺された。
動揺のかけらも見当たらない。あの札作るの大変だったのに!上忍相手で勝てるわけないだろうに!!

ひいひい言いながら逃げまわるも、結局捕まってしまった。というか単に私のチャクラ切れだ。
うまく動かない体で、カチャリと音を立てて首筋に当てられたクナイを睨みつける。くそ、私が動いたらどうする気だろうか。ビビって動きでもしたらブッスリいって大量出血間違い無しなんですけど。

ぽんと頭に手がのせられて、設置された時計を見ると、4分と少し。4分しか動いてないのにチャクラ切れって、相当体力無いのかもしれない。



どうやら、というかやっぱり私は落第らしい。原則スリーマンセルでしか合格できないんだとか。忍には運も必要だとも言われた。つまり先生はそこで伸びてる二人はハズレだと、そうおっしゃいますか。まあ私もそう思うんですけれど。所詮子供だったのだ。

「残念だったな。まあ、お前素質はあるから、次回は受かれるだろ」

「あー……いや、もういいです」

諦めないど根性なんて持ち合わせてない。ゆっくり首を振ると、不思議そうな顔をされた。いやだって二度目のアカデミーで補助金貰えるかも分かんないので。

「ひとつ聞きたいんだが、なんで術使わないんだ?チャクラコントロール上手いのに」

確かに木の上走り回ってたけど、そんな自覚はなかった。お世辞か?

とりあえず術を知らない。知っているのはアカデミーで習った基本忍術のみ。
普通は両親に教わったり巻物買ったりして覚えるらしいが、そんなものはないのだ。やっぱ親が忍者じゃないと、忍者になろうって気すら起きないのだろう。厳しい世界だ。

「まあ、私両親いないんで。巻物買うにもお金ないですし…」

憐れみの眼差しを受けた。うるせーこのシステムなんとかしないといけないと思うぞ。戦乱の世の中、孤児なんていっぱいいる。まあ私みたいに保護者も友達もいない事例はレアだと思いますけど。

「金がないならあの忍具は何処で手に入れたんだよ…」
いいとこの嬢ちゃんが買ってもらったんじゃねーの。親に作ってもらったんじゃねーのと呟く担当上忍。
あの結界と火は何だったんだ?との声も聞こえる。
全く動揺せずに対処したくせによく言うぜ!全然効かなかったじゃないですか。あれ作るの大変なのに。

「全部私が作ったんです。材料費はほぼ0円ですよ」

「……は?」

口をぽかんと開けた上忍師は少し面白かった。

起爆札ってレアだから、完全に模写したらいけるんじゃない?と思い挑戦したら出来たのだ。チャクラは消費するけども。疲れるけれども。
何かが間違っているのか、私が作ると威力が上がる。扱いはちょっと難しくなるが。

ちなみに真ん中の爆っていう字を火に変えたり水に変えたりすると別の効果が得られるようだ。流石に色々改良はするけど、根本はあまり変えない。何故札が爆発するのかなんて、私にも分からないから。
爆発せずに火や水が出てきたりする。

結界札はノリとテンションだけで作った。あの時の私はどうかしてたと思います。札を見たらやってみたくなるだろう。陰陽師的な結界。
成功したから万々歳だが、失敗したら翌朝中二病の再発に心がボロボロになっていたこと間違い無しだ。本当によかった成功して。

不思議に思うことは多々あれど、そもそもチャクラ自体が意味不明なのだ。そんなこともあるだろうと流すすべは手に入れた。そういうもの、なんでもありなのだ。多分。


「…お前、忍者じゃなくて武器屋やったら?起爆札とか専用の」

なるほど。その手があったか。


戻る

×
- ナノ -