Dランク任務をこなしつつ、待機所で札を売ること一週間と少し。
家賃とライフラインが存在しない家に住み、出費は食費だけ。物騒な世の中だから札はよく売れるし、あっという間にお金は貯まる。

最近は中忍以上のおじさん達に大人気だ。どうやら自分の子供に札をもたせるらしい。まあ簡単防犯道具だからなあ… 気持ちはわかる。
中忍以上なら、この戦争フラグビンビンの現状も理解できてるだろうし。
私は責任持ちませんからね!と言い含めて、紙を丸めて投げることをおすすめしておく。
特に意味は無いけど、巻き込まれないように遠くまで飛ばせたほうがいいだろう。子供ならそっちのが投げやすそうだし。

いつ札が作れなくなって稼ぎがなくなるか分からないから、貯めておくに越したことはないなーと思って、忘れていた。

「ユズ!買い物に行くわよ!約束したわよね!」

今日は任務もないし、待機所に行かなくてもいいかなーと、うだうだと家で過ごす朝9時頃。

いのがサクラを引っ張って、開けっ放しだった縁側に身を乗り出した。

そういえばそんな約束もしたなあ…
軽く身支度を整えながら、のそのそと動き始める。

「あー…おはよーいの、サクラ」

「よし、居たわ。買い物に行きましょ!」

「ちょっといの!挨拶くらいしなさいよ! おはようユズ。今日予定入ってる?」

「入ってないのは確認済みでしょ。連れださなきゃきっと一日中寝てるわよ」

おっしゃるとおりで……よくわかってらっしゃる。

まあ元々約束はしていた事だし、私も特にやることはないので、断る理由もない。
あー、札は作り貯めなきゃいけないんだけど、まあそれは明日にでも。

「えーと、じゃ、いく?」

切り出すと、女子2人はニコリと笑った。


商店街をぷらぷらと歩き、普段は入らないようなオシャレな店を冷やかしていく。
あー、なんか、すごい女子って感じがするなあ……… 考えてみたら、“こっち”でこんなふうに買い物するのは初めてかもしれない。
あんまり買う気は無いけれど、見てるだけで充分楽しいし。

「ねえサクラ!これとか可愛いんじゃない?」

「えー、私はこっちのほうが好きかも。あ、あれは?」

二人の会話を他所にキョロキョロと辺りを見回していると、ふと、綺麗な髪飾りが目に入った。ふらふらと近づいて見ると、シンプルで値段も手頃だ。ふむ……

話しながら近寄ってきた二人も気がついたようで。

「あら、かわいいじゃない。買うの?」

「私も欲しいけど……そうじゃなくて、二人にさ。髪、短くなったでしょ?似合うんじゃない?」

言うと、二人は顔を見合わせて同時に吹き出した。え、なんだ?変な事言ってないと思うんだけど。

「まったく、あんたはもー」

「今いのとも話してたんだけど、さっきから自分の分見てないわよ?」

「へ?……あー、そうかも。いや、見るのは楽しいんだけど、着る機会とかないし、」

「そんなの、作ればいいじゃない!」

「そうね!これ、お揃いにしましょ?」

少しずつデザインの違うそれを、いのとサクラは選びとると、私に目を向けた。
……いや、すごい使いやすそうだし、まあそれなりに欲しいんだけど。
お揃いって…なんか。

「…嫌?」

「ちが、嫌じゃなくて!照れるというか…… じゃ、私、これで」

逃げるように一つを手に取ると、二人はまた顔を見合わせて笑った。

「じゃ、次に遊ぶ時にこれ付けてきましょ」

「そうね!ほらユズ、機会が出来たわよ」

「…う、ありがと」

少しの照れもバレバレだったようで、二人は満足気にハイタッチをした。
くそ、なんだこの年下に遊ばれてる感。
しょうがないでしょ、お揃いとか何年ぶりだと思ってんだ。まったく……


その後もいくつかお店を回って、里の端、大きな壁の近くまで歩く。一休みとばかりに目に付いた甘味屋に落ち着くと、白玉を飲み込んだいのが、「そういえば」と私にスプーンを付きつけた。

「カカシ先生とデキてるらしいじゃない」

「……は?」

「…その反応は嘘ね。」

「だから冗談だって言ったじゃない」

もー、と顔を膨らますサクラに、かわいいなぁなんてズレたことを思う。さすがヒロインなだけある。

……いやでもその情報ながしたのサクラじゃないかな?

ジト目で見ると、サクラがごめんごめんと舌を出した。あんみつを頼んでから超ご機嫌ですしね。くそぉかわいい。

「いや、でも真面目な話、カカシ先生は優良物件かもよ?アンタ大人びてるし」

「そーねぇ、カカシ先生ってお金持ちそうだしね」

「……いや、いやいや」

女子こっわ……この子達何歳だ…こんなこと言い出すのか…こっわ……

「いや、ほら、年の差とかさ…」

「そんなの関係ないわよ」

ぐ、つよいな

「…いや私別にそういう意味では好きじゃないし」

「愛のない結婚もアリだと思うわ」

「……カカシ先生が捕まりそうだからやめよ。私はあの人をこれ以上変態にはしたくない」

最終手段とばかりに真顔で言い放つと、ふたりはなるほど……とうなずいた。

「よく考えたら同期と先生が結婚するのも複雑な気持ちになるわね」

サクラが呟いた言葉に、「わからなくもないわね。アスマ先生はありえないけど、」といのが同意する。カカシ先生信用ゼロだなほんと。ほんと……

「えー、ユズ、好きな人いないの?一般人とか」

「いないって……というか私も一般人だし……」

「ああ、そういえばユズって忍びじゃないのよね…… あのアカデミーの試験、どうかと思うわ」

「任務もしてるし、頼めば額当て貰えるんじゃなーい?」

いのの言葉に、「さすがにそれは難しいわよ」とサクラが苦笑する。まあ確かに任務手伝うだけでも相当な例外処置だし。というか、

「私も額当てはいいかなあ……赤い布、気に入ってるし」

「ああ、あんたが任務の時とかに付けてるやつね?」

「元は額当ての代わりみたいなもんだったんだけど、似合ってるって、言われたから…」

「だれに!?」

「三代目様に」

なーんだーと肩を落とした2人に苦笑する。正直、今はそれどころじゃないんだよなあ。

なんかあったら報告しなさいよ!という二人に、苦笑を浮かべながら白玉を口に放り込んだ。窓の外には、この里を囲っている壁が見える。あー、木の葉崩し、どうなるんだろ。



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