案の定木登り修行でヘトヘトになり庭という名の森の中でヘタってるですなう。こんなに疲れているのにまだまだ日は暮れる気配がない。つまりはそれほど時間は経っていないということだ。うーん…木登りでこんなに疲れるものなのかなー。
前世のときはチャクラなんて感じなかったけれど、今なら何となくわかる。今の私のチャクラはケージ表記ならギリギリレッドゾーンに入るか入らないかくらいだと思う。
ため息と共に土の上に仰向けになって、木漏れ日を浴びた。

「どーいうことだってばよー」

チャクラの絶対量が少ないのか、扱いが下手なのか、どっちなんだろうなあ。
出来れば後者がいいけど、割としっかり木に登れるからもしかしたら前者かもしれない。やべー チャクラって修行で増やせたっけか 何が悪いのかよく分かんないから何もやりようがないです残念…!

ぼーっと上を見ていると、木の上がカサリと動いた。
誰かいる。
あの服的に多分木の葉の…?首を傾げていると、その人影は私の上に降ってきた。アカンこれ下手に動いたら確実に踏まれる!とっさにぎゅっと目をつぶって手で頭を覆うと、すぐ隣からトサッという音と共に押し殺した笑い声が聞こえた。

「随分お疲れだなあユズ、大丈夫か?」

「イルカ先生…?」

なんでここに…と口を開く前に、立てるか?と手を差し出される。大人しく従って立ち上がると、顔についていた泥を拭われた。お母さんか…ありがとうございます… 出来ればもうちょっと穏便に登場して欲しかった。いたずらっ子みたいな登場しやがって…

「心配したんだぞ?試験に落ちたと聞いたから、てっきりアカデミーに戻ってくると思ってたんだがなあ。まあ、元気そうでよかった」

あーそういえばこの人にはなんにも知らせてなかった。というか正直それどころじゃなかった。すいませんと頭を下げると、ポンポンと撫でられる。お前もかブルータス…!アカデミーではあまりやらなかったはずなんだけども。

「修行中だったのか?」

「あ、はい。木登りを… 先生、ちょっと見てもらっていいですか?」

「お?いいぞー?教え子の成長を見るいい機会だしな」

よっしゃー!これで今の改善点が分からないループのような状況から抜け出せる!一回くらいならチャクラもそんなに消費しないだろうし!
内心ガッツポーズをしながら軽く助走をつけ、木を駆け上がった。足のチャクラを意識しながら、手近な枝でくるり逆さまになる。
常々思うんだけれど、スカートだったらこれ出来ないよなあ。スパッツ履いててもアウトだと思う。私はズボン派だから全然平気だけど、ワンピースとかだったら下手したら脱げるぞマジで。大丈夫かサクラ…

すたんと降りると、イルカ先生がにっこりと笑いながらぱちぱちと拍手をした。

「十分上手いじゃないか!何か不安なことでもあるのか?」

「あーっと…なんか、チャクラ切れが早い気がするんですけど…」

「ああ、そのことか」

少しだけ低くなった声にヒヤリとした。シリアスなイルカ先生はちょっと嫌だ。

「なんというか、元々お前はチャクラ量が少なくてな。下忍になる前にもう少しアカデミーでコントロールを学ばせようという意見もあったし…」

「え、じゃあ私が試験落ちた理由ってそれですか?」

「いやいやいやいや!そうじゃないぞ。もう生徒じゃないから言うが、教師間である程度会議をして、それをまとめた物を火影様に提出するんだ。最終的に合否を判定するのは担当上忍だし、教師である俺らの意見はあまり入らないようになってる。俺らはアカデミー卒業までしか関われないからな」

ふへー、そんなことしてたのか。漫画でも生徒してても気づかなかった。まあでもそのくらいはするか、な?
そうだったんですねーと頷いて、首を傾げる。

「でも私のチャクラ量が少ないのは事実なんですよね?何で…」

「それは遺伝というか…個人差としか言いようがないなあ…」

あごに手を当て黙りこくってしまったイルカ先生に、意を決して口を開く。

「…あの、ちなみに私のチャクラ量ってどのくらいですかね?」

イルカ先生はとても言いづらそうに目を逸らして首筋を掻いた。おい嫌な予感がひしひしとするぞ?あとこの人こんなに嘘つけなくて大丈夫かな?

「うーん、と…同期だとサクラが一番一般的なチャクラ量だから、彼女を10とするだろ?ユズ、お前は6…いや、5くらいかな」

「…10分の5は2分の1って言うんですよ先生。半分ですよ」

「は、はは」

目を逸らすイルカ先生にはぁーと大きなため息をつき項垂れた。そりゃあバテますわ。人の半分しかチャクラないんですもん。こりゃ忍者にならなくてよかったかも知れないなあ…

「ま、まあまあ!今日はほら、様子見ついでに噂のモノを買おうと思ってな。見せてくれないか?」

「あーと…札ですか?いいですよ」

明らかに話題を変えた先生に便乗して、腰のポーチからゴソゴソと一通りだすと、感心したように眺めはじめた。

「はーすごいなこれは」

「ちょっとチャクラ流すと使えますよ。あとは起爆札の要領と同じです。貼ったり、トラップ掛けたり」

威力の最も小さい火の札を空中でボンッと燃やしてみせると、先生からおおーという声が上がった。気分は手品師である。最近この札パフォーマンス用か火打ち石代わりにしか使ってないぞ。便利です。

「これ、火で最終的に威力が上がるとどのくらいになるんだ?」

「えーっと、今のところの最強は…上忍の豪火球ぐらいですかね。大きさ的には。実際あんなにしっかり丸くはならないんですけど。燃え上がるだけです」

というか透かせて見たりしても何もないですよイルカ先生ー!別に野口さんが見えるわけでもあるまいし!

「燃え上がるだけ?ということは、相手に向かって飛んで行ったりもしないのか」

「ええ、根本的な原理は起爆札と同じなので、燃え上がったり水が出たりしかしません。下手したら自分も巻き添えくらいますよー」

「案外難しそうだな」

「まあ、これ以上複雑なのは作れないですね。元々起爆札いじっただけなんで……」

結界札とか例のお守りはその限りではないですけどね。言わないけども!
アレは私にも仕組みがよく分かってないから説明しろと言われてできるものではない。私が聞きたいくらいだ。

普通は起爆札いじろうとか思わないけどなーとか言いながら、イルカ先生はいくつか札を買っていった。この人札使う機会あるんだろうか。直近で木の葉崩しになるだろうけれど、できれば使うような機会はないほうがいい。

「あ、明日は火影邸に来いとの仰せだ。なんか頼みごとがあるみたいだったぞ?」

なんだと?



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