明日は来なくていいですよ。なんて言われたものの、やはり中忍試験最終日は気になるわけで。

追加分の札を作った後、日が沈みだすのを見計らって家を出た。
そろそろ試験も終わってるはず…と、火影邸に入ると、「あら、ユズじゃない」と声が聞こえた。

「サクラ、いの、おつか…れ?え?」

二人を視界に入れて首を傾げる。二人共なんか違う。いや、サクラには見覚えがある。というか記憶の中にある“春野サクラ”に近づいている…? 
…ああ、なんだ。そういえばそんなことあったわ。

「二人共、髪切ったんだ。似合ってる」

「はは、ありがと」

「そんなこと言ってくれたのユズだけよー!もう!シカマルもチョウジもなーんも言わないんだから」

これだからアイツらモテないのよ!と騒ぐいのとは対照的に、サクラの表情は浮かない。少しだけ眉を潜めて私を見るいのに、軽く笑って返した。おーけーおーけー触れませんよ。というか十中八九サスケだろうなあ。なんだっけ、あの…首の呪いのやつ。


「ね、今度一緒に買い物行きましょ!」

「買い物?」

「そ!私もこの長さじゃ結びにくいし、せっかく短くなったのよ?楽しまなきゃ!サクラも行くわよね?」

「あ、うん。もちろん!」

「うーん。私流行りとかよくわかんないしなあ…」

「そんなの、私達が教えてあげるわ。アスマ先生から聞いたわよ。あんた最近結構人気なんだって?なら少しくらい余裕あるわよね?」

ずい、と顔を覗き込まれたので、思わず一歩下がる。事前リサーチまで完璧…だと…情報も速いし、気遣いも上手いとは…。サクラの表情も明るい。流石だ。いの。

「わかった。二人が暇なとき教えてよ」

「オーケー!流石に試験中だし、そこまで大きな任務は入らないはずよ」

「あ、そうだ。試験、どうだった?」

「私達は予選負け。あ、サスケくんとシカマル、ナルト、あとはシノが本戦出場かしら」

「本戦は一ヶ月後だから、班員から本戦出場者がでたら、基本通常任務は入らないの」

「へぇー…人手不足とかになりそうだね」

「大丈夫よ。下忍が何人か抜けるだけだもの。本戦に出場しないメンバーは普通に任務あるって、さっき火影様から説明が」

「私とサクラで組むこともありえるってことね!」

勝ち気な目を合わせた二人は、楽しみねと笑いあっていた。おお…試験前より仲良くなってる気がする。女と女でも拳で語りあえるのか…

じゃ、私達行くわね。あーお風呂に入りたい!なんて言いながら去っていった二人を見送った。ふむ。修行パートでも任務はあるよなあ。なるほど。じゃあその説明のためにここに来てたのか。

でも確か…ヒナタとかリーは結構大きな怪我をしてたはず。上手くスリーマンセルを組めるのか謎なところだ。
えーと、女子二人とキバと…チョウジ?チョウジ入院してなかったっけか…?うーむ…と首をかしげながら歩いていると、待機所の前でシカマルとハヤテさんを見つけた。なんだこの組み合わせ。気だるげコンビ?

「お、おつかれ?シカマル。ハヤテさんもおつかれさまです」

「ええ、ありがとうございます」

「おう。そっちも順調みたいだな」

「ああ、おかげさまで。正直助かったよ。前より儲かってるしね。あとさっきいのから聞いた。本戦出場、おめでとう」

「サンキューな」

めんどくせーけど、とぼやいたシカマルに、ここまでブレないのもすごいなとぼんやり思っていると、心なしか優しい目で私達を眺めていたハヤテさんが口を開いた。

「じゃあ僕はそろそろ…ユズさん」

「え、はい。なんですか?」

「ちゃんと持ってますから」

ベストの左胸あたりをとん、と叩いたハヤテさんは、軽く笑みを浮かべて去っていった。会えるのは最後かもしれない、と考えた自分を思いっきり否定する。ハヤテさんだって強い。私のお守りがなくたって、油断さえなければ、そう簡単には死なない。お守りが一瞬だけ隙を作ってくれれば。大丈夫だ。大丈夫。私にはこれ以上できることなんてないんだから。

「…どうした?」

「…いや、なんでもない。シカマルは一人?」

「ああ。ったくナルトのヤロー、終わるなりすぐ飛び出しやがって。あの体力馬鹿が…」

「ああ…おつかれ」

「はぁー…俺も帰って寝る。じゃーな」

「うん、ありがとう」

ヒラヒラと手を振りながら背を向けるシカマルにお礼を言って、待機所のドアを開ける。ふむ。誰もいない。とりあえず椅子に腰を下ろした。

うーん、やっぱり私も帰ろうかなー。元々商売する気はないし、こころなしか火影邸がバタバタしてる気がする。中忍試験がちゃんと終わったのも分かったし、偶然だけれど、ハヤテさんがお守りをちゃんとつけているのも分かった。十分だ。

「一ヶ月の準備期間か…」

私は何をすればいいんだろう。一応、大した力にはならないだろうけど、木の葉崩しに備えて札は用意しておきたい。めっちゃ作らなくては。

あとは…うーん…いいや。とりあえず今は帰ろう。長居し過ぎても邪魔だろうし。

くあーと伸びをして立ち上がる。明日のことは明日考えよう。とりあえず今は無事に予選が終わったってことで!





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