「食べますか?」
待機所でグダグダしていると咳と共に差し出された大量の飴玉。言わずもがなハヤテさんだ。ちなみに火影様にいちいち許可取らなくても良いとのお言葉を頂いたため、割と入り浸る予定です。やったね!
「あ、ありがたくいただきます」
コロコロと口の中で転がしながらあたりを見回す。待機所はさっきから数人が出たり入ったりを繰り返していて、かなり儲けることが出来た。さすが忍者が集まる場所だけある。すごいぞ待機所。
「ハヤテさんはお仕事大丈夫なんですか?」
「ゴホッ…ええ、休憩ですよ」
「なるほど。お疲れ様です」
「ユズさんも、ご苦労様です」
二人揃ってため息をついた。暇だ。そしてハヤテさん、すごくいい人だ。私のことを気にしてくれるし、表情はあまり動かないけれど、言葉は丁寧で人当たりもいい。顔色はとても悪いけれど。
なんとかして助けられないかなあ、と思う。
正直ハヤテさんが死ななくても原作が狂うようなことはない気がする。ああでもどうやって助けようか。私が加勢しても殺されるだけだろう。ああでも札ならなんとか…
お守りのような札が作れないかなあと考えていると、待機所のドアが開いた。
「ゲホッ…ああ、紅さん」
「お疲れ様です。はじめまして。札屋です」
「あら。貴女が噂の札屋ね。夕日紅よ。ヒナタ達から話は聞いているわ」
えー話って何の…アカデミーで特に関わりがあったわけでもないのに…と思いつつ「はあ。そうですか」と返す。というより、
「紅さんはお仕事ですか?今って中忍試験じゃ…」
「ああ、そのことね。私達下忍の担当上忍はあくまで兼任なのよ。通常の上忍としての任務ももちろんあるわ。少ないけどね。上忍がペット探ししかしないわけにもいかないでしょ?」
「え、じゃあカカシさんとかも…」
「ああ…カカシさんは少し例外ですかね…」
「上忍の中で実力も実績もトップクラスだもの。かなりの量をこなしてるはずよ。まあ、最近は無茶な任務の入れ方はしてないようだけど」
苦笑した紅さんに、そうだったんですかと曖昧に返した。
無茶な任務は最近入れていない。なんとなく、過去が絡んでいるのかもしれないと思った。私は分からないし、予想でしかないけれど。
「大変なんですね。担当上忍って…」
「でも楽しいわよ?自分に発展途上の部下がついて、成長を間近で見られるんだもの」
そう言ってハヤテさんから飴玉を受け取った紅さんは、嬉しそうに口の中に放りこんだ。
美人の幸せそうな笑顔は眼福だ。
本当に、木の葉の人達はいい人ばかりだなと思いながら、二つ目の飴玉を口に入れた。